カテゴリーアーカイブ: テクノロジー

Googleの新広告システム「FLoC」が方針転換、どのように変わるのか?

GoogleはサードパーティーCookieを使った既存のターゲティング広告の仕組みを廃止し、新たな広告システムを作り上げようとしています。これまでは新システムにおいて、アルゴリズムがユーザーを数万種類のコホート(グループ)に分類するという方法が取られる予定でしたが、Googleが方針転換を行い、256種類ほどの「トピックベースの分類」を行う方向で進んでいるとのことです。

Google considers switching FLoC to a topic-based approach
https://digiday.com/marketing/google-switch-floc-cookie-replacement-fingerprinting-potential/

2019年1月、GoogleはChromeにおいて2年以内にサードパーティーCookieを廃止する計画だと発表しました。これは、サードパーティーCookieを使った広告システムが広範囲にユーザーの行動を追跡しすぎることから、プライバシー上の懸念が浮上したためです。一方で、サードパーティーCookieのサポートを廃止すると、ユーザーの興味・関心を元に広告を表示するというターゲティング広告が配信できなくなるという問題もありました。ターゲティング広告は広告の効率性を上げるため、コストパフォーマンスの面から多くの企業が利用を求めるもの。これを受けてGoogleは、「効率性の高いターゲティング広告を維持しつつも、ユーザーのプライバシーに配慮する」という新しい広告システムの開発に迫られました。

新しい広告システムはプライバシーサンドボックスという提案の中でさまざまな仕組みが議論されており、Googleが有力候補として挙げているのが、FLoCというAPIです。FLoCは、機械学習アルゴリズムを使用してウェブサイトを訪れたユーザーのデータを分析し、何千人ものユーザーからなるグループを作成するというもの。各グループには「FLoC ID」が割り当てられます。

FLoCとは何ですか? | GIGAZINE.BIZ

GoogleはすでにChromeにおいてFLoCのテストを開始しています。しかし、プライバシーを重視して開発されているはずのFLoCですが、リバースエンジニアリングなどによってユーザーの特定に利用できる可能性が専門家から指摘されています。また実際に、広告企業ではFLoCを使って個人を識別するための試みがスタートしているとのこと。

すでにGoogleの新システム「FLoC」を利用して個人を識別しようとする試みが広告企業でスタートしている | GIGAZINE.BIZ

このような問題を受けて、GoogleはFLoCにおいて「どのようなグループか」が不透明なコホートIDを割り当てるのではなく、「トピックカテゴリ」を設けて、カテゴリごとのIDをユーザーに割り振っていく方法に切り替えようとしているとのこと。

標準化団体・Internet Engineering Task Force(IETF)のミーティングの中で、Googleのプライバシーサンドボックスチーム・技術リードマネージャーであるJosh Karlin氏は「コホートではなくトピックにこだわるのが理にかなっているのかもしれません」と発言。新しいFLoCの仕組みでは、ウェブサイトの主題に関連し、「フィットネス」「パフォーミング・アート」といったトピック中心的なIDが生成されるとのこと。当初予定されていたFLoCはどのようにグループ分けされているのかが外部からわかりませんでしたが、トピック中心的なIDは、「どのようなカテゴリ分けが行われているのか」という点で透明性が改善されているといえます。

Karlin氏によると、これまでのコホートIDは約3万種類ほど生成される予定でしたが、トピックベースのIDはIABコンテンツ分類法に基づき256種類にまで絞られるとのこと。このため、広告企業がFLoC IDをフィンガープリントとして使用し、自社データと結び付けてターゲットの絞り込みを行うことが難しくなると考えられています。また、ユーザーは自分に割り当てられたトピックへのオプトインオプトアウトが可能になるとのことです。

当初GoogleはChromeにおけるサードパーティーCookieの廃止を2022年中に予定していましたが、2021年6月25日に、ChromeでのサードパーティーCookie廃止を延期することを発表しています。仕様変更もあってか、最終的なFLoCの形は「まだ何も決まっていない」とGoogleの広報担当者は述べています。

AT&Tが広告部門のXandrを約1100億円でインド企業に売却検討中

情報通信・メディアコングロマリットのAT&Tが、モバイル広告ネットワークを運営するインドのInMobiに、広告部門「Xandr」の売却を検討中だと判明しました。売却価格は10億ドル(約1100億円)に上ると見積もられています。

Report: AT&T hoping to sell Xandr advertising technology business for $1B – SiliconANGLE
https://siliconangle.com/2021/07/20/report-att-hoping-sell-xandr-advertising-technology-business-1b/

AT&T scrambles to sell ad tech unit Xandr after months of mismanagement – Axios
https://www.axios.com/att-advertising-xandr-inmobi-42a4f6bd-4c09-4416-aedb-89e216c1b6bd.html

AT&Tは2018年にXandrの前身となる広告取引所「AppNexus」を16億ドル(約1800億円)で買収。その後、AT&Tはテレビ広告技術会社であるClypdを買収し、AppNexusと合わせる形でXandrを設立しました。

Xandrは広告主やブランドが放送局からテレビの広告枠ヘッダービディングで入札でき、かつ広告キャンペーンの効果を測定可能なソフトウェアを販売しています。デジタル広告における入札と同様に、Xandrでは複数のマーケットプレイスにわたる広告枠の一覧から入札を行うため、単一のマーケットプレイスを使用する時に比べて広告価格を最適化できます。当時のCEOだったRandall Stephenson氏は「テレビの広告枠の売買を自動化する」ためにXandrを設立しましたが、記事作成時点でXandrは収益化に成功していないとのことです。

関係者筋の情報によると、Xandrは年間3億ドルから3億8000万ドル(約330~420億円)の収益を生み出し、5000万ドルから9000万ドル(約55~100億円)の損失を計上します。XandrのCBOだったKirk McDonald氏が退任した後、XandrはAT&Tによって「無視され、誤った方法で管理されてきた」といわれており、技術的には優れていたもののビジネスが失敗に終わったとみなされています。

Xandrは広告の売り手と買い手の両方のためのプラットフォームですが、記事作成時点ではAT&Tが所有するワーナーメディアディレクTVといった売り手側からの収益に依存しています。ワーナーメディアやディレクTVはAT&Tからスピンオフされる予定であり、今後は収益化を望めないことからXandrの売却が計画されているという流れです。

GoogleがサードパーティーCookieをChromeで廃止し、新たな広告の仕組みを構築すると発表してからというもの、広告のエコシステムは急速に変化しています。広告企業の買収も増加しており、Xandrの売却もこの中の1つとして、InMobiの拡大を促進するものとなりうるとのこと。約1100億円という売却価格はInMobiにとって投げ売り価格ですが、AT&Tにとっても「売却成功」と言える価格となっています。

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「プライバシーへの懸念」は実在しないという「プライバシーのパラドックス」の真偽を調査した結果とは?

ネットサービスのユーザーは「プライバシーについて心配している」と表明するものの、実際にはわずかな金銭と引換に自分の個人情報を企業と共有しており、「プライバシーへの懸念」など存在しないのだという考えを「プライバシーのパラドックス」と呼びます。プライバシーのパラドックスは実在するのか?ということで、研究者が決済サービスAlipayのユーザーにアンケートを行った上で、実際の選択を観察するという調査を行いました。

The data privacy paradox and digital demand | VOX, CEPR Policy Portal
https://voxeu.org/article/data-privacy-paradox-and-digital-demand

オンラインサービスが一般化するにつれ、企業との「データ共有」のあり方が議論されるようになっています。デジタル広告におけるサードパーティーCookieの使用などもその一例で、直接的にユーザーと関係のない企業がユーザーデータを利用することから、近年は「ユーザーのプライバシーを侵害する」と規制されつつあります。

一方、「ユーザーは『プライバシーを懸念している』と表明しつつも、実際にはわずかな金銭と引換に自らの情報を提供することに抵抗がない」という指摘も存在します。このような傾向は過去の調査結果からも明らかになっており、「プライバシーのパラドックス」と呼ばれています。プライバシーのパラドックスは、「実際のころユーザーはプライバシーの心配などしていないのだ」という主張の論拠として用いられます。

プライバシーのパラドックスは本当に存在するのか、アリババグループによって創設された研究機関「Luohan Academy」の研究者らが調査を行いました。

アリババはAlipayという決済アプリを運営しており、研究者はAlipayユーザーに対して「プライバシーへの考え」についてアンケートを実施すると共に、実際にユーザーがAlipayプラットフォームで行ったデータ共有に関する選択を分析しました。なお、Alipayは中国に9億人以上のユーザーが存在し、決済システムだけでなく、Alipay内で機能する200万個以上のサードパーティーアプリを利用可能です。ユーザーがこれらアプリを利用するには事前に特定の個人情報の共有について同意する必要があり、その個人情報の内容はニックネームからIDナンバーまで、多岐にわたるとのこと。

2020年7月に研究チームがAlipayユーザーに対して「Alipay上のアプリとのデータ共有に対する好みや懸念についての12項目からなるアンケート」を実施したところ、1万4250人から回答が得られました。「Alipay上のアプリと個人情報を共有する時にデータ・プライバシーについて心配しますか?」と尋ねた質問に対しては。46%が「とても心配している」、39%が「心配している」と答え、「心配していない」と回答した人は15%でした。

その後、2019年7月から2020年7月にかけてユーザーの行動を観察したところ、「とても心配している」と答えたユーザーは平均として、利用した16.3個のアプリのうち11.3個でデータを共有したことが判明。「心配している」と答えたユーザーは15.5個のアプリのうち11.5個でデータを共有し、「心配していない」としたユーザーは14.3個のアプリのうち11.2個でデータ共有を行いました。

以下のグラフは左から「とても心配している」と答えたグループ、「心配している」と答えたグループ、「心配してない」と答えたグループ。青いグラフが初回訪問したアプリの数、オレンジがデータ共有を許可したアプリの数です。

「プライバシーに対する懸念が大きいユーザーはデータ共有の数も少なくなる」というのが一般的な予想ですが、調査の結果、いずれのグループもデータ共有を許可する割合がほぼ同じであることが示されました。これに対し研究者は「プライバシーのパラドックスを裏付ける結果になった」と述べています。

一方で、研究者は「ユーザーのプライバシーへの懸念」と「使用するアプリが広範かつ頻繁であること」という2点が正の相関にあることを指摘。デジタルサービスに対する需要が大きいユーザーほどデータ共有に関するプライバシーへの懸念が大きくなっており、この相関がプライバシーのパラドックスの説明に役立つという見解を示しました。

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注目を集めるアドテク企業「Integral Ad Science」は何を提供していてどんな会社なのか?

アドテク企業のIntegral Ad Scienceが2021年6月29日に1株あたり18ドル(約2000円)で1500万株の普通株式を新規株式公開し、IPOを行いました。6月30日にはNASDAQ株式市場で取引がスタートしましたが、同日に1株あたりの価格が22ドル(約2400円)にまで上昇し、同社の価値は33億ドル(約3670億円)近くになりました。大きな注目を集めるIntegral Ad Scienceはどのような会社なのか、まとめました。

Ad tech company Integral Ad Science closes up 14% in market debut
https://www.cnbc.com/2021/06/30/ad-tech-company-integral-ad-science-pops-18percent-in-market-debut.html

Integral Ad Science Pursues $240 Million IPO (Pending:IAS) | Seeking Alpha
https://seekingalpha.com/article/4436493-integral-ad-science-pursues-240-million-ipo

近年のデジタル広告のサプライチェーンは複雑化しており、「よく言って不透明、悪く言って詐欺」と指摘されるほど。このため配車サービスのUberは「支払っている広告費の3分の2を削減してもパフォーマンスが変わらなかった」という事態に陥ったことがあると言われており、広告を出す側にとって「本当に広告が表示されているのか」「効果を出しているのか」は見えにくく、気になるところです。

このようなニーズがある中で、Integral Ad Scienceは自社を「検証会社」と位置づけており、世界中の企業にデジタル広告の監視と検証サービスを提供しています。具体的に言うと、Integral Ad Scienceのテクノロジーは広告が適切な場所で、不正なく、ちゃんと表示されているのかを監視するとのこと。

Integral Ad ScienceのCEOであるLisa Utzschneider氏は、「YouTubeで表示されるコカ・コーラの広告を例に取ると、我々は広告が本当に人間によって視聴されているのかを確認したり、ブランドとマッチしイメージを守るコンテンツと一緒に表示されるよう調節を行ったりします。また、コカ・コーラというブランドに合う、または合わないコンテンツを探し出すというコンテンツターゲティングのお手伝いもしています」と述べています。

Integral Ad Scienceは世界8カ国に11箇所のオフィスを持ち、コカ・コーラの他に、ネスレ、ベライゾン、グラクソ・スミスクラインといった大手を含む2000企業をクライアントに抱えています。またロイターやコムキャストといったパブリッシャーと提携しており、「パブリッシャーがより高品質なメディアを提供し、全体的な収益率を向上させ、最適化を図るための手助けをしています」ともUtzschneider氏は述べています。加えて、前述の通り同社はコンテンツターゲット広告のサービスを提供していますが、これはGoogleがサードパーティーCookieを廃止した後の世界で、ブランド側が「避けたい」あるいは「近くに置きたい」コンテンツを探し出すための差別化要因になると考えてのことだそうです。

Utzschneider氏はもともとMicrosoftでオンライン広告事業を担当していた人物で、Microsoftを退社後はAmazonのグローバル広告部門の責任者を経て、Yahoo!の最高収益責任者(CRO)を務めました。

Fortune Business Insightsの調査報告によると、「グローバルなメディア監視ツール」の市場は2020年に27億400万ドル(約3000億円)規模になったとみられており、2028年にはさらに拡大して72億5000万ドル(約8050億円)規模になるものと予測されています。企業のデジタル広告に対する支出は依然として増加傾向にあることから、デジタル広告の監視および検証機能に対する需要は今後も高まっていくと考えられているとのこと。

Integral Ad Scienceの競合企業は2021年4月にIPOを行ったDoubleVerifyだと言われています。DoubleVerifyはIPO以降、株価を31%上昇させ、6月末の時点で1株あたり47.35ドル(約5260円)となっています。

なお、新しいデジタル広告の出稿先を探している場合は、「理解の伴う認知」を拡大できる記事広告という方法もあります。

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Googleの「プライバシーサンドボックス」をオフにする方法

Googleはターゲティング広告のための新しい広告システムを作ろうとしています。この新システムである「プライバシーサンドボックス」はすでにテストが開始されており、Google Chrome 90にはユーザー向けのコントロールも搭載されました。ということで、プライバシーサンドボックスのコントロールはどこにあるのか、どうやってオフにするのかをまとめました。

まずはGoogle Chromeのアドレスバーの右側にあるメニューボタンをクリックし、「設定」を選択します。

以下のような設定画面が開きます。

この中の「プライバシーとセキュリティ」に「プライバシーサンドボックス」という項目があるのでクリック。

デフォルトだとプライバシーサンドボックス(試用版)はオンになっているので、青色のボタンをクリック。

ボタンが灰色になったら設定完了です。

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すでにGoogleの新システム「FLoC」を利用して個人を識別しようとする試みが広告企業でスタートしている

サードパーティーCookieに代わる新しい広告の仕組みとしてGoogleが開発中の「FLoC」は、企業や組織から問題点が多く指摘されていますが、すでにテスト段階にあります。そして、テスト中のFLoCをユーザー識別子として利用しようとする試みが、早くもアドテク企業や広告会社によって行われているとDigidayが伝えています。

Privacy watchers see fears coming true with Google’s FLoC
https://digiday.com/marketing/as-ad-tech-firms-test-ways-to-connect-googles-floc-to-other-data-privacy-watchers-see-fears-coming-true/

サードパーティーCookieを利用する既存のデジタル広告は、企業がユーザー個人の行動を広範に追跡可能であるため、プライバシーの観点から問題が指摘されてきました。これを受けて広告企業のGoogleも、2020年に「ChromeにおけるサードパーティーCookieの利用を2年以内に廃止する」と発表。それ以来、サードパーティーCookieに代わる新しい広告の仕組みがプライバシーサンドボックスの中で議論されています。

このうち、2021年6月時点で実現可能性が高いと見られているのが、FLoCというAPIです。FLoCは、ユーザーを数千から数万人単位の集団(コホート)に分類し、「FLoC ID」と呼ばれる識別子を割り当て、その興味や関心を割り出します。ユーザー個人を識別・追跡せず、また情報はブラウザにとどまり第三者である企業の手に渡らないので、サードパーティーCookieを使った仕組みよりもプライバシーが向上しているとGoogleは主張しています。

しかし、FLoCは集団という単位であっても、ユーザー追跡を行っていることに変わりはありません。また、企業がFLoCを利用することで、個人レベルの追跡ができる可能性も、Firefoxの開発元であるMozillaにより指摘されています。

Googleの「FLoC」によってどのようにプライバシー侵害が起こるのか? | GIGAZINE.BIZ

懸念点とされていることの1つに、FLoCがブラウザベースで追跡を行う点があります。Cookieは「ユーザーが少なくともウェブサイトを一度訪れ、Cookieの使用を許可する」必要がありました。しかし、FLoCの場合、その必要すらなく、初めて訪れたウェブサイトにもユーザーのデータを渡します。電子フロンティア財団の技術スタッフであるBennett Cyphers氏は「これは前例のないことです」と述べています。

FLoCは2021年3月からChromeでテストが行われています。そして海外メディアのDigidayによると、既に複数の広告会社がFLoC IDを収集し、識別可能なデータと結び付けたり、人々が非公開にしている情報を明らかにするための分析に利用したりと、サードパーティーCookieを模倣してるとのこと。

デジタルマーケティング企業のNeustarもテスト中のFLoC IDを収集し、その活用方法を模索しています。Neustarはクライアントである広告主が有するメールアドレスなどの情報、つまりファーストパーティーの識別子とFLoC IDを関連させる予定とのこと。

またID5というデジタル広告企業は、IPアドレス、URL、タイムスタンプといった情報をユーザー識別のために利用していますが、FLoCがこの識別精度をブーストさせると予想しています。ID5は自社システムにまだFLoC IDを統合していないものの、FLoCの作成するコホートが数万人規模と「小規模」であることから、ユーザーの絞り込みに大いに役立つと考えているそうです。「安定した識別子を作成するためにFLoC IDが役立ちます」とID5のCEOであるMathieu Roche氏は述べています。

加えてアドテク企業GroupMのNishant Desai氏は、「FLoC IDが個人識別方法の解決策であることは、間違いなく真実です」と述べています。FLoCはIPアドレスとは違い、時間の経過とともに変化していきますが、いずれIPアドレスのように永続的な識別子として機能する可能性があると述べました。

そして、FLoCのリバースエンジニアリングも既に開始しています。リバースエンジニアリングはソフトウェアの動作を解析して、動作原理やソースコードを調査すること。たとえば広告企業のCafeMediaは、リバースエンジニアリングによってFLoCのデータを広告表示に利用するだけでなく、FLoCを無効にしている人に対して「コンテンツ連動型広告の表示」を通知できると説明しています。

リバースエンジニアリングでFLoC IDから個人を特定する方法は、記事作成時点では明らかではないとのこと。しかし、CafeMediaのDon Marti氏は、FLoCを有効にしているブラウザから得られた何百万ものデータポイントを分析したところ、特定のFLoC IDが他よりも特定キーワードと関連する傾向を発見しました。Marti氏は「あるFLoC IDを持つ人が金融とテクノロジーに興味があること」を割り出しており、証券会社がこのようなFLoCのデータで傾向が判明している人々からターゲットを絞って広告を表示していくことも可能だとしています。

一方で、全ての広告会社がFLoC IDに識別子としての可能性を見いだしているわけではなく、小規模パブリッシャーの広告を管理するMediavineは、今後も自社データをFLoCとリンクする予定はないと述べました。MediavineはFLoCよりも識別可能なファーストパーティーデータの可能性に目を向けているそうです。

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Googleの「FLoC」によってどのようにプライバシー侵害が起こるのか?

Googleが開発中の新しい広告の仕組み「FLoC」は、電子フロンティア財団から「最悪」と評されるなど、強い反発を受けています。そこでFirefoxを開発するMozillaが、FLoCのプライバシーについて詳細に分析し、何が問題なのか、どのようなプライバシー侵害のリスクがあるのかを公開しました。

Technical Comments on FLoC Privacy
(PDFファイル)https://mozilla.github.io/ppa-docs/floc_report.pdf

Privacy analysis of FLoC
https://blog.mozilla.org/en/mozilla/privacy-analysis-of-floc/

Googleはプライバシー保護を向上させるため、ChromeにおけるサードパーティーCookieの利用を廃止し、それに置き換わる新しい仕組みを作り出そうとしています。

この新しい仕組みの1つが「FLoC(Federated Learning of Cohorts/連合学習のコホート)」と呼ばれるもの。Googleは、インターネット広告においてFLoCを利用することで、高いターゲティング効果を生み出しつつも、ユーザーのプライバシーを保護できると主張しています。

FLoCについては以下から詳細を読むことができます。

FLoCとは何ですか? | GIGAZINE.BIZ

しかし、FLoCに対しては、Oracle電子フロンティア財団GitHubBraveWordPressなど、数多くの企業や組織が問題点を指摘しています。そんな中、Firefoxの開発元であるMozillaが開発中のFLoCについて詳細な分析を行い、プライバシーの問題がどれほど含まれるのかを評価しました。

◆FLoCはユーザー追跡に利用できないのか?

現行のインターネットにおけるサードパーティーCookieは、ユーザー個人のインターネット上での行動を記録して、そのデータを第三者のサーバーに送信することから、「企業が個々人の行動を追跡することができる」という点が問題として指摘されています。このためGoogleはFLoCにおいて「ユーザーを数千~数万人単位の集団(コホート)に分類し、そのコホートが持つ興味・関心といった情報を企業に示すことでターゲティング効果を上げる」という仕組みをとっています。個々人に識別子を振って興味・関心を割り出さないため、プライバシーを侵害しないという発想です。

しかし、Mozillaによると、FLoCで作成されるコホートは多くとも数万人規模のものであり、企業が持つ他の情報と組み合わせることで、ユーザーを迅速に絞り込むことが可能とのこと。個人の絞りこみに利用される可能性のある情報は以下の通り。

・ブラウザのフィンガープリント
フィンガープリントを日本語に直すと「指紋」の意味になります。ユーザーが使用するブラウザにはさまざまな特徴があり、ChromeやFirefoxというブラウザの種類のほか、PCのOS、使っているフォント、言語、インストールしているプラグイン、タイムゾーンなど、人によって異なる使用条件を細かくみていくと、個人を特定することが可能だといわれています。Mozillaは、このようなフィンガープリントを少し使うだけで、数万人単位のコホートを数人規模にまで絞り込むことが可能だと述べています。

たとえば、1万人から構成されるコホートがあったとします。コホートだけの状態だと個人が特定されることはありませんが、企業が「人々を8000グループに分割するフィンガープリント」を有していた場合、「1万人中の1人」を「数人中の1人」にまで絞り込むことが可能です。コホートの規模がさらに大きくなれば絞り込みは難しくなりますが、それでも「個人の特定ができない」という意味にはなりません。

「フィンガープリントにはどういったものがあるのか?」「どのくらいの精度なのか?」という詳細は以下から読むことができます。

Cookieなしでもユーザーを識別可能な「フィンガープリント」とは何か? | GIGAZINE.BIZ

・複数回の訪問データ
現行の案では、FLoCのコホートIDは1週間ごとに再計算されるようになっています。人の行動は変化していくので、1週間ごとに異なるIDが割り振られることが考えられますが、この「変化するID」を企業が収集することで個人特定につながる可能性があるとのこと。

Firefoxは「Total Cookie Protection(TCP)」というプライバシー保護機能を実装しており、ユーザーによる複数ウェブサイトへの訪問をトラッカーが関連付けさせないようにしています。しかし、TCPは1つのウェブサイトに対する複数の訪問を関連付けないことを目的としていません。このため上記のような場合、TCPでは対応できないとMozillaは述べています。

・FLoCがCookieポリシーを弱体化させる
サードパーティーCookieを利用した現行のターゲティング広告では、「トラッカーが埋め込まれているウェブサイトの数」によって、トラッカーの取得する情報量が決まります。このため、より多くの情報を取得するためにはそのトラッカーを埋め込んでいる人が多い、大きな広告ネットワークに参加したり、複数のトラッカーを組み合わせたりする必要があります。また、GDPRといった法規制の存在により、Cookieの利用に同意が必要になるケースも増えてきました。この場合、ユーザーがCookieの利用について「同意しない」とすると、その分トラッカーはクロスサイトのユーザーデータを得づらくなります。

しかし、FLoCはCookieと違ってウェブサイトごとに同意/非同意を求める仕組みにはなっておらず、既存のCookieポリシーと同様に扱うことができません。また、全てのウェブサイトにおけるユーザーのFLoC IDは同じであるため、トラッカーが外部のデータと紐付けるための「共通ID」となり得ます。企業が収集したファーストパーティーデータや、フィンガープリントを利用し、「フランスに住み、Macを持ち、Firefoxを使っていて、このコホートIDを持つ人は車が好きですか?」といった風に絞り込んだターゲティングを行うことも可能になるとのこと。

◆プライバシーに対するGoogleの対応

Googleは上記の問題に対し、いくつかの対処方法を提案しています。

まず、ウェブサイトはFLoCに参加するかどうかをあらかじめ決定できるようになる予定です。すでに行われているChromeでのテストでは、FLoC APIあるいは「広告関連のリソース」を受け入れることで初めてウェブサイトがFLoCの計算に含まれます。最終的にどのような仕様になるかはまだ結論が出ていないものの、「ウェブサイトはデフォルトでFLoCに参加し、オプトアウトしたり、Permissions-Policy HTTP Headerを使用したりすることで、FLoCを拒否できる」という内容になる見込み。この問題点は、オプトアウトの形式を取るため、多くのウェブサイトが知らぬ間にFLoCに参加することになるということです。

また、Googleは性的指向・医療問題・政治的思想といった「デリケートなカテゴリ」がFLoCで使用されないようにする方法を検討しています。しかし、何がデリケートであるかは人によって認識が異なります。また、「それ自体はデリケートではないが、デリケートなウェブサイトに関連するウェブサイト」が存在することもあり、目的とするカテゴリを完全に排除することは難しいとのこと。さらに、FLoCのコホートがデリケートかどうかを判断するにはまず、Googleがデリケートなカテゴリについて情報を収集して記録する必要があるという点も問題視されています。

FLoCはまだ開発段階にあるものの、プライバシーに関して重大な問題を引き起こす可能性があるため、Googleはこれらの問題への対処に集中する必要があるとMozillaは述べました。

大手じゃなくても製品を市場に広めて地位を確立するにはどうすればいいのか?

「作った製品を多くの人に使って欲しい」という気持ちは当然のものですが、一般的に、市場で既に成功者がいて地位を確立している場合、新規参入は難しいとされています。しかし、デザインツールの市場に注目すると、画像編集ツールを提供するAdobeは長年「大手」として君臨しているものの、ここ数年はFigmaSketchCanvaといったスタートアップも成長しています。

なぜ本来難しいはずの新規参入に、これらスタートアップが成功したのかを、ベンチャーキャピタル・Greylock Partnersの元従業員であるKevin Kwok氏は「アトミック・コンセプト(原始的なコンセプト)」という言葉で説明しています。

How to Eat an Elephant, One Atomic Concept at a Time – kwokchain
https://kwokchain.com/2021/02/05/atomic-concepts/

アトミック・コンセプトとは、「製品がどのように構築され、他企業の製品ラインナップとどのように違うのか」を説明する根本的な概念をいいます。Figma・Sketch・Canvaの3製品は、アトミック・コンセプトをAdobeと分かつことで、すでに確立していたAdobe製品が持つ利点とユーザーベースを、「弱点」に変えることに成功したとKwok氏は述べています。

そもそも、市場は顧客のニーズによって支えられているため、顧客ニーズが急速に変化する市場において、会社が大手であることのメリットは小さいとのこと。顧客のニーズが変わる原因はさまざまですが、新しいユースケースの登場や市場ダイナミクスの変化も理由になります。

例えば、大手企業はコスト削減の観点から小さなユースケースに対応することを怠りがちですが、この「小さなユースケース」が後に大きなユースケースになることがあります。大手が小さなユースケースを軽視し、そこに着目したスタートアップが後に大きな成長を遂げることは少なくありません。また、市場ダイナミクスの変化に取り残された企業としてKwok氏はEbayを挙げています。オンラインで販売される商品の数が比較的少なかったインターネット初期はEbayの分散型オークションモデルが大きな価値を持ちましたが、eコマースが成長すると「価格」と「速度」がより重要になりました。このためAmazonのようなビジネスモデルが成長し、Ebayが不利になったとのこと。

加えて、インターネットにより人の行動が変化し、新しいタイプの顧客が出てくることもあります。このような新しいタイプの顧客は、大手の既存商品にはない、異なるニーズを持つことになります。

以下のグラフは縦軸がユースケース、横軸が時間の変化を示します。時間が進むにつれユースケースは増加していますが、ある時点でこれまでのユースケース(青いグラフ)以上に、新しいユースケース(緑のグラフ)が急増しており、ここにスタートアップが参入する余地があるというわけです。

デザインツール市場で新しいユースケースや新しい顧客が登場し、市場ダイナミクスの変化が起こる中で、大手だったAdobeと根本的に異なる「アトミック・コンセプト」を持っていたのが、Figma・Sketch・Canvaです。

Kwok氏はそれぞれの企業のアトミック・コンセプトを以下のように位置づけています。縦軸は画像処理・画像とデザインを含む処理・プロジェクト・コラボレーションといったワークフローについて、横軸はピクセル・ベクター・コンポーネント・テンプレートといった素材の違いについて示しています。Adobeの製品が基本的に個人レベルの画像処理に焦点を当てていたのに対し、FigmaやSketchはデザインが企業内で行われることを前提にプロジェクトやコラボレーションに着目しました。またCanvaの特徴はコンポーネントやテンプレートに力を入れている点にあります。

Photoshopはピクセル、Illustratorはベクターという違いがあるものの、基本的にいずれも「幅広いユースケース」を想定し、「画像や写真の編集」「デザインの編集」を目的としています。

一方、2010年に設立されたSketchはデジタル製品のUIやUXを設計することを前提に構築されました。このため、Sketchはデザイナーツールとして市場を独占していたAdobeのIllustratorから「デジタル製品の作成に最適ではないもの」を全て削除し、デジタルデザインの最適化に焦点を当てています。またベクターベースにすることでPhotoshopとの違いを生み出し、個人レベルではく大規模で複雑なプロジェクトで使われることを想定に構築することで、独自のアトミック・コンセプトを確立させました。

顧客のワークフローについて理解し、「顧客が本質的に求めていること」に対応させることにより、最高の製品は生まれるとKwok氏は述べています。

FigmaはもともとPhotoshopのライバルとしての位置付けでしたが、潜在的ユーザーと対話を持つにつれ、製品の焦点をUIやUXに移したとのこと。そしてUIやUXのデザイナーにとって重要なのは「コラボレーションを行うこと」だと気づいたFigmaは、WebGLといった新技術を利用して製品を独自の方法で進化させていきました。コラボレーションの力を最大化させることでFigmaは会社のあり方を根本的に再考し、新しい価格・流通モデルを設定することになったとのこと。

そして、これまでにはなかった、全く新しいユースケースと顧客に賭けたのがCanva。SketchやFigmaはデザイナーによる利用を想定していますが、Canvaは「非デザイナーによる利用」を想定しています。Canvaの着目したユースケースや顧客は、Facebook・Instagram・YouTubeが企業のマーケティングで利用されるようになったことに起因します。これらのプラットフォームで行われる広告はターゲットを絞っているため、1つのキャンペーンでもパーソナライズされた複数のバージョンが必要になります。テレビや雑誌におけるキャンペーンでは1つの大きな広告が使われるためデザイナーによる制作が必要ですが、SNSでのキャンペーンは「小さく」「速度重視で」実施するため、非デザイナーであるマーケティング担当が使えるデザインツールが必要になりました。

もちろん、Canvaで行える事はPhotoshopでも全て実行できますが、非デザイナーのマーケティング担当者はピクセルレベルの画像処理を必要としていません。Canvaには「特定の目的」のために構築されたテンプレートとレイアウトがあり、ユーザーがそれらを使いたい画像や文字と組み合わせることで創造性を発揮できるという点がポイントです。

また、Instagramの投稿、結婚式の招待状など「目的のために構築されたテンプレート」を中心にするCanvaで「ユーザーが求めるデザインやツール」は、「非ユーザーがGoogleで検索する言葉」でもありました。このためCanvaはSEOを通してプラットフォームを拡大することが可能でした。Canvaがユースケースを元にツールを構築し、多くのテンプレートやサンプルを用意することで、Googleで検索する潜在的なユーザーを効率的に取り込むことができたわけです。

加えて、Canvaはテンプレート・レイアウト・フォントなどを作成して販売したり、コミュニティを作成したりといったことが可能だったため、プラットフォームとして機能したことも、成功のためのポイント。このエコシステムにより、Canva自身だけの力でなく、エコシステムの力でユースケースを増やしていくことが可能でした。

もちろん、有料あるいは無料のアドオンを作成することは、Canva以外のデザインツールでもよくあることです。ただし、Canvaはアドオンの統合が極めてシームレスで、直接製品に組み込まれている点で優れています。摩擦がないためユーザーが自然にアドオンにアクセスでき、使用率が増加。またマーケットプレイスをファーストパーティとして扱うことで、クリエイターはCanvaを通じて収益を上げることが可能になり、プラットフォームのネットワーク効果が強化されました。

デザインの分野でだけ上記のような状況が起こっているわけではありません。デジタルコンテンツに関わる多くの分野で、新しいユースケースがどんどんと増え、同様の状況が生じています。しかし、初期の成功をおさめた企業でさえ、自分自身のアトミック・コンセプトを明確に定義し、それに応じて市場での位置付けを行っているところは少ないとのこと。これらの企業は競合や顧客、そしてどのようなユースケースが製品構築にとって重要なのかを明確にしていません。そして、このような問いに答えるには、「顧客が本当に欲しいもの」についてきちんと考えることが必要だとKwok氏は述べています。

なお、ウェブサービスやソフトウェアといったツールを広めて市場を開拓してくには、ストーリーテリングを得意とし使い勝手の良さを詳細に解説できる以下の記事広告もオススメです。

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https://gigazine.net/gsc/article_list/advertorial

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Googleの新しい広告システム「FLoC」はどのような仕組みで動作するのか?

サードパーティーCookieに代わる広告の仕組みとして開発が進められているGoogleのAPI「FLoC」は、OracleVivaldi電子フロンティア財団などからその内容が批判されています。なぜGoogleがFLoCを開発しようとしているのかや、実際にFLoCはどのような技術なのかという、その仕組みをエンジニアの大津繁樹氏が解説しています。

◆なぜFLoCが開発されているのか?
FLoCは、規制対象となっているサードパーティーCookieの代わりとなる、新しい広告の仕組みの1つをいいます。

既存のデジタル広告は、インターネットにおけるユーザーの行動を広範に追跡し、ブラウジング履歴などから属性・所在地・興味・関心を割り出して、それらの情報を基に広告を表示する「行動ターゲティング」という手法を用いています。この行動ターゲティングを行う上で必要不可欠なのが、サードパーティーCookieです。

しかし、上記のような手法はユーザーのプライバシーを侵害することから、近年、サードパーティーCookieは規制対象となっています。このため、世界最大の広告企業としてサードパーティーCookieを中心に据えた広告システムを構築してきたGoogleは、新たに、サードパーティーCookieを利用しない仕組みを構築する必要性に迫られました。

この新しい広告の仕組みを提案・開発・実験しているのが、プライバシーサンドボックスです。プライバシーサンドボックスでGoogleは、サードパーティーCookieを利用しないことに加え、フィンガープリントといった個人の特定につながる技術を利用したり、個人の追跡を行ったりしないことを明言しています。

プライバシーサンドボックスではこれまでに複数の提案が行われてきましたが、FLoCは新しい仕組みとして有望なAPIだと考えられ、Chrome 89からテストが行われています。

◆FLoCとは?
FLoCはFederated Learning of Cohorts(連合学習のコホート)の略ですが、Chrome 89のオリジントライアルの中では、連合学習は利用されていないとのこと

2021年5月時点ではChrome 2.1版のFLoCでテストが行われていますが、このFLoCについての技術は以下の通り。なお、FLoCはまだ開発中であり、今後、これらの技術は変更されていく可能性があるとのことです。

◆FLoCの技術の詳細はこんな感じ
簡単に説明すると、FLoCはユーザーを数千人単位のグループ(コホート)にわけて、コホートIDを割り当てるというもの。一般的に、デジタル広告は以下3つの情報を組み合わせて表示されますが、FLoCは(2)のために利用されます。

(1)ファーストパーティーCookieおよびコンテンツの情報
(2)何に興味を持つ人が広告を見るかといった一般的な情報
(3)ユーザーの取った特定の行動

サードパーティーCookieを利用したデジタル広告の場合、ユーザー個人の行動や情報を第三者企業が知り、分析やターゲティングに利用することができます。しかし、FLoCではユーザーの閲覧行動をブラウザ内の処理で数値化し、それを数千人単位のグループにまとめた状態で行動ターゲティングに利用するため、第三者企業がユーザー個人の情報にアクセスすることはありません。この方法であれば、今よりもユーザーのプライバシーに配慮し、かつ既存のシステムと同様に行動ターゲティングの効果を上げることができると考えられています。

大津氏はChromeのFLoCアルゴリズムをGoに移植したFLoC Simulatorを作成。FLoCの処理を以下のようにまとめています。

FLoCとはなにか – ぼちぼち日記
https://jovi0608.hatenablog.com/entry/2021/05/06/160046

GitHub – shigeki/floc_simulator: FLoC Simulator
https://github.com/shigeki/floc_simulator

FLoCの処理は大きく分けて、以下の4つから構成されているとのこと。

1.navigation時にFLoC対象のページ履歴にフラグを付ける
2.7日間に一回、履歴からSimHashを計算し、Chrome SyncでGoogle側に送る
3.(FLoCバージョンで1回実施) Google側でユーザのSimHashをまとめ上げてクラスター化する。ブロックするCohort Idを特定し、クラスターファイルを生成し、全Chromeユーザーへ配布する
4.サイトのFLoC APIの実行に伴い、SimHashとクラスターデータから Cohort Id を計算し、出力する

図にするとこんな感じ。

1:navigation時にFLoC対象のページ履歴にフラグを付ける

FLoCはユーザーが訪れた全てのウェブページをもとにユーザーコホートを作成するわけではなく、ウェブページが以下3つの条件すべてを満たした場合に、ユーザーの閲覧履歴にあるウェブページにフラグをつけて計算対象にします。

1.navigation の IP がPublicルーティング可能であること
2.メインドキュメントの permission policy がFLoCを許可していること
3.広告が表示されているページ、又は FLoC API (document.interestCohort()) が実行されているページであること

特に「1」は、プライベートIPを持つ内部Proxyを経由してインターネットアクセスがあった場合、FLoCの対象外となる可能性があることを示しています。また、GitHubWordPressといったウェブサービスはFLoCをブロックすることを表明しており、全てのウェブサイトにおいて行動ターゲティングが可能になるわけではない模様。

そして、フラグがつけられたウェブページのドメインが、 SimHash値に変換されます。

2: 7日間に一回、履歴からSimHashを計算し、Chrome SyncでGoogle側に送る

SimHashは、似ているデータを近いハッシュ値に変換するLSHの一種です。SimHashを使うと、ブラウザの閲覧履歴に並ぶドメイン情報がランダムな数字に変換され、かつ傾向の近いドメイン群は近似値になります。またSimHashは膨大なユーザーデータを一定の小さなサイズに変換できるというメリットも持ちます。

さらに細かくいうと、SimHashはいくつかのランダムなベクトルを用意し、ユーザーデータとランダムベクトルとの角度の関連性から、データの類似性を導きだし、低ベクトルにサイズを減らします。

例えば以下の場合、左図ではUserAもUserBも赤い波線上部のエリア(1のエリア)に位置するのでSimHash=1となります。中央図では、UserA・UserBともに赤い波線における1のエリアかつ緑の波線の0のエリアに位置するのでSimHash=10、右図ではUserA・UserBともに赤い波線と緑の波線における位置は同じですが、青い波線に対してはそれぞれ0・1という異なる位置にあるため、UserAはSimHash=100、UserBはSimHash=101となるわけです。このように表現することで、ユーザーの閲覧履歴という情報を、1~3bitという小さいサイズで表示することが可能になります。

FLoCでは、50個のランダムベクターを使い、ユーザ履歴の情報を50bitのSimHashに変換させるとのこと。

ユーザー履歴の情報をSimHashに変換したとしても、同じSimHashを持つユーザーが少ない場合、個人が特定される恐れがあります。また、センシティブなカテゴリーの割合が多いユーザー履歴では、センシティブな情報に偏ったコホートIDが生成されてしまうという問題もあります。

このためFLoCでは、ユーザ履歴やプロファイルなどをGoogleアカウントと一緒に同期するChrome Syncの仕組みを利用して、SimHash値をGoogleサーバーに送り、グループ化(クラスター化)させます。

3: Google側でユーザのSimHashをまとめ上げてクラスター化する

グループ化 の際、Google側の処理は、以下2つに分けられるとのこと。

1.ユーザから送られたSimHash値をソートし、2000人以上のユーザを含むようにSimHash群に分割する。SimHashの分割群に対して小さい順にIdを割り振りCohort Idとする。
2.Cohort Id 内に含まれるドメインを洗い出し、「経済状況」や「アイデンティティ」といったセンシティブなカテゴリーを含む割合が平均より10%以上大きければそのCohort Idに対して blocked のフラグを付ける。

つまり、記事作成時点ではSimHashを集めてソートして分割しているだけなので、機械学習(教師あり学習)を利用していません。このためFLoCは「Federated Learning of Cohorts」の略称ではあるものの、「Federated Learning(連合学習)」は行われていないという理解になります。

そしてGoogleが以下のように、ソート・分割したSimHash群と、コホートIDの対応表を作成し、このデータがクラスターファイルとして全Chromeユーザーへ配布されます。

4:サイトのFLoC APIの実行に伴い、SimHashとクラスターデータから Cohort Id を計算し、出力する

クラスターファイルを配布されたユーザーのブラウザは、自身のSimHash値と上記の対応表を照らし合わせて、コホートIDを計算します。そして広告が表示されるウェブサイトでFLoC APIが実行されると、ブラウザのコホートIDを提供します。

コホートIDは上記の通りユーザーの閲覧履歴に基づく興味・関心をベースとしているので、コホートIDに基づいて表示される広告は、ウェブサイトのコンテンツそのものとの関連性ではなく、過去に訪れたウェブサイトとの関連性が高くなり、広告パフォーマンスを高めることができると考えられているわけです。

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AdobeがサードパーティーCookieなしのターゲティングを可能にする「Real-Time CDP」について発表

サードパーティーCookieの規制が増加するなかで、「サードパーティーCookieに依存せず、パーソナライズされた広告を配信する仕組み」が強く求められています。Googleは独自の広告システム「プライバシーサンドボックス」でその仕組みを開発中ですが、一方でAdobeはファーストパーティーデータを使った広告配信システム「Real-Time CDP」について発表しました。

アドビ、業界初のファーストパーティデータ指向型 次世代Real-Time CDPを発表
https://www.adobe.com/jp/news-room/news/202104/20210428_adobe-announces-industry-first-cdp-architected-for-first-party-data.html

Adobe pitches at first-party customer data challenge, marketing workflow with latest tech releases – CMO Australia
https://www.cmo.com.au/article/688031/adobe-pitches-first-party-customer-data-challenge-marketing-workflow-latest-tech-releases/

Adobe wants to replace the cookie – Techzim
https://www.techzim.co.zw/2021/04/adobe-wants-to-replace-the-cookie/

近年はサードパーティーCookieの使用が規制される方向にあることから、Googleは2019年に「2年以内にChromeにおいてサードパーティーCookieを廃止する」と発表しており、新APIFLoC」を始めとする新しい広告システムを開発しています。

サードパーティーCookieの利用が問題となったのは、サードパーティーCookieがインターネットユーザーの行動を広範に追跡し、ターゲティング広告を表示するため。このため、新システムは「ファーストパーティーデータ」を使った広告配信を行うことを想定しています。

ファーストパーティーのデータを使った広告配信は、AppleのApp Tracking Transparencyでも予定されており、今後の広告システムの中心となるとみられています。ところが2019年4月の調査では、多くの企業がファーストパーティーのデータを活用しきれていないことが判明しています。

What Are Advertisers’ Challenges With Using First-Party Data? – Insider Intelligence Trends, Forecasts & Statistics
https://www.emarketer.com/content/advertisers-struggle-first-party-data

Adobeが提供するReal-Time CDPは、顧客企業と提携し、ファーストパーティーデータを軸にサービスを展開していくとのこと。Adobeのアニール・チャクラヴァーシー氏はReal-Time CDPが、顧客の期待する「個人情報のコントロールとパーソナライズされた顧客体験」の両方を提供するとしています。

具体的にReal-Time CDPの機能として発表されているのは以下の5つ。

◆1:ファーストパーティーデータの一元化
ファーストパーティーデータは、行動データ・属性データなどさまざまなものを含みます。Real-Time CDPは企業がさまざまな種類のファーストパーティーデータを集約し、より完全な顧客像を形成するために役立つとのこと。具体的には、ウェブサイトの閲覧履歴、ブランドサイトに登録した顧客のメールアドレスや電話番号を含むファーストパーティーのウェブデータ、アプリデータ、媒体から提供されたメディアデータを組み合わせることが可能です。

このように一元化されたデータをテスト&ターゲティングアプリケーションAdobe Targetで利用することにより、企業は顧客体験をパーソナライズできるとAdobeは述べています。

◆2:機械学習を活用したリアルタイムのパーソナライゼーション
電子メールや電話番号などの登録をユーザーに促すのは、ブランドサイトにとって難しいもの。しかしReal-Time CDPを使うと、ユーザーとのやりとりに基づき「見込み客のプロファイル」を作成可能に。このプロファイルをAdobe Targetに渡すことで、コンテンツをリアルタイムに編成し、顧客にあわせて登録画面を表示させるタイミングを調整するなど、パーソナライズされた顧客体験を提供できるとのことです。

◆3:セグメントマッチ
セグメントマッチは、企業が他社とのパートナーシップによってファーストパーティーデータセットを拡張できるというもの。たとえばアパレル企業がジュエリーブランドとマッチングすることで、「アパレルサイトでドレスを購入した顧客に最適なアクセサリーをオススメする」といったことが可能になります。

◆4:類似(look-alike)セグメント
これは、既存顧客と似た属性を持つ顧客を特定し、その顧客グループを自社データに追加するというもの。「例えば、特定の既存顧客をサンプルとして指定すれば、ブランドのデータベースの中から同様の特徴を持つ別の顧客で構成される、類似セグメントを構築することができます」とAdobeは述べています。類似セグメントはセグメントマッチと合わせて使うことも可能です。

◆5:B2B企業の新しい顧客体験管理
Real-Time CDPにはB2B版も存在します。個人と法人のプロファイルを統合し、B2B企業であってもB2C企業のように施策を行うことが可能になるとのことです。

IDGの研究ディレクターであるGerry Murray氏はAdobeのReal-Time CDPについて、「顧客は、いつ・どこで・どのように・誰とやりとりするかに関係なく、ブランドが1つのものとして機能することを期待しています。これを実現するための唯一の方法は、AdobeのReal-Time CDPのようなソリューションを使用して、企業が組織あるいはアプリごとに分かれたデータを解放し、顧客データを作成することです」とコメント。顧客体験の向上は、データインフラによるサポートなしで行えないことを示しました。

またAdobeのGabbi Stubbs氏は企業間の提携やコラボレーションが増加していることに言及。2023年までには、単なるデータ管理ではない「データ共有戦略」がビジネスで成果を生み出すようになることを示唆しました。

「私たちはセグメントマッチをデータコラボレーションの次なるレベルの革新とみています。これは私たちのサードパーティーCookieレスな将来の戦略の一部です」とStubbs氏は述べています。

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