カテゴリーアーカイブ: マーケティング

Google広告で誰でも「広告主の過去30日の広告履歴」が確認可能に

Googleは検索エンジンやYouTubeでさまざまな広告を表示しており、ユーザーは自分に向けて表示された広告について、「広告を出した人は誰か」「所在地はどこか」といった情報を確認できます。2021年9月24日にGoogleは新たな仕様変更を行い、前述の情報に加えて「表示された広告を出した人が過去30日に出した他の広告」を確認できるようになると発表しました。

Giving users more transparency into their Google ad experience
https://blog.google/products/ads-commerce/giving-users-more-transparency-their-google-ad-experience/

Google will let you check up on advertisers’ campaign histories – The Verge
https://www.theverge.com/2021/9/22/22687777/google-ads-transparency-disclosure-verification-update

「表示された広告を出した人の過去30日の広告履歴」を確認する方法は以下の通り。例えばYouTubeの広告の場合、動画の左下にある文字列をタップ。

画面下部にメニューが表示されるので「About this ad(この広告について)」をタップ。

すると「Why this ad?(なぜこの広告が表示されるのか?)」という画面が現れます。「See more ads by this advertiser(この広告主の他の広告を見る)」をタップ。

広告主名として「Coat Depot」、正式な企業名として「Coat Depot, Inc.」、認証を受けた場所として「アメリカ合衆国」と表示され、その下には掲載している広告の大まかな数と、過去の広告がリスト式で表示されました。ここで偽造品や不適切なコンテンツが表示されている場合は、Googleのポリシーに違反するとして、ユーザーはGoogleに報告可能。Googleは報告を受けて確認後、ポリシー違反があれば広告を削除するとのことです。

GoogleやFacebookは広告事業を主な収益源としていますが、両社ともに詐欺広告や虚偽の広告を表示していることが問題視されてきました。このため広告の透明性を上げることを目的とした取り組みが行われており、Googleは2020年に広告主の名前と所在地を含む「広告の開示情報」を導入。またFacebookは、FacebookとInstagram上で表示された広告を検索できる「広告ライブラリ」をスタートさせています。Googleの新たな発表は、広告の透明性を向上するためのこのような取り組みの1つとなっています。

なお、広告主の過去30日の広告履歴を確認する機能は、今後数カ月かけてアメリカ全土で展開され、2022年には段階的に世界展開される予定です。

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「SaaSスタートアップを運営すること」は2013年と2021年で何が変わったのか?

ウェブサイトの解析ツールを提供する「Heap」の共同設立者であるラヴィ・パリク氏は2020年にHeapを退職し、2021年新たに開発者向けプラットフォーム「Airplane」を立ち上げました。パリク氏が2013年と2021年という2度のSaaS立ち上げを通して感じた変化や、共通する重要な点をまとめています。

I started SaaS companies in 2013 and 2021. Here’s how things have changed
https://blog.airplane.dev/i-started-a-saas-company-in-2013-and-2021-heres-how-its-changed/

パリク氏が「2013年と2021年のSaaSスタートアップの違い」として挙げているのは以下の7点。

◆1:これまで以上にSaaSが増加し、成長速度も速くなっている
Heapが起業した2013年において、100億ドル(約1兆1000億円)の価値を持つスタンド・アローンのSaaS企業はSalesforceServiceNowWorkdayの3社しかありませんでした。一方、2021年9月において、100億ドル以上の価値を持つSaaSの公開会社は47社あり、うち6社は1000億ドル以上(約11兆円)の価値を持ちます。

またHeapは製品が動くようになった状態で、シード段階において評価上限額1200万ドル(約12億円)で200万ドル(約2億円)の出資を獲得しました。しかし、今日の状況では、同様の段階おいて評価上限額2500万ドル(約27億円)で500万ドル(5億5000万円)の資金を調達することは珍しくありません。さらに、バーチャルイベントのスタートアップであるHopinは2年で年間経常収益(ARR)が77.5億ドル(約8500億円)にまで到達しており、SaaSスタートアップの成長は加速しているとのこと。

◆2:SaaS企業が増加することで初期のけん引力を得ることが困難に
2013年にHeapがスタートした時、オンライン掲示板のHacker NewsにウェブサイトのURLを投稿するだけで1日3000人以上のアクセスがあった、とパリク氏は述べています。当時、Heapのウェブサイトにはランディングページとデモムービー、「アクセスをリクエストする」というフォームだけでしたが、200万ドルを調達したことを報じるTechCrunchの記事が投稿されると、500人以上が申し込みを行ったそうです。

一方、2021年においては、Hacker Newsや新製品共有のためのプラットフォーム・Product Huntで、毎日何十件とSaaSのリリースが発表されています。また1億ドル(約110億円)の資金を調達するSaaSも珍しくなく、数百万ドルの資金調達を伝える記事が人目を引くことはありません。

Heapが公開されて1年間のマーケティング活動は、Hacker NewsとTechCrunchで十分だったとのこと。しかし、AirplaneはHeapと状況が異なることから、早期に安定した流通を実現するためにより計画的なアプローチを取っているそうです。

◆3:製品を公開するまでの道筋
Heapは数カ月の開発のすえ、辛うじて動作する「必要最低限の機能だけを搭載した製品(MVP)」をリリースしました。しかし、2021年において、多くのスタートアップが製品を公開する前に投資家から資金を調達し、より多機能かつ洗練された製品設計のため他企業と契約を結んでいます。Airplaneの場合はこの中間の進路を取っており、「かなり洗練されているが、機能が限られたMVP」をもって製品を公開したとのこと。

どのようなアプローチがベストなのかは、正解がありません。ただ、製品に関するアイデアがどれだけ考え抜かれていても、「人に製品を使ってもらうこと」によって学べることは多くあります。このためより高度な製品を作るべく他企業と提携するよりも、早期にMVPを公開する方がよいとも考えられます。例えばHeapは当初、「開発者ツール」として作られていましたが、製品を人に使ってもらうことで、「製品マネージャーとの相性がいい」ことが判明しました。「早期に立ち上げて、市場のフィードバックを早くに得られたことはよかった点です」とパリク氏は語ります。

◆4:SaaSがビジネスモデルとして理解されている
2013年において、DropboxGitHubはSaaS企業ではなく、Facebookのような「消費者向けのテクノロジー企業」として認識されていました。また、2021年ではSaaSビジネスがうまくいっているかを測るために使われる売上継続率(NRR)の価値を理解する投資家も、当時はほとんどいなかったとのこと。このため「成長率は大きいが解約率も高い企業」が高額の出資を受けることもあったそうです。加えて、「SaaSの経験が豊富な役員」は存在せず、BtoCのマーケティング担当副社長やエンジニアリング担当副社長の経歴を持つ人物が代わりとして選ばれていたとパリク氏は述べています。

2021年時点では、SaaSはより成熟した市場となり、SaaSへの出資に熟達した投資家や、役員、アドバイザーなどが多く存在します。このため、サービスを開始したばかりの規模の小さなSasSでも、将来的な予想が付きやすいという点はメリットとして挙げられています。

◆5:SaaSは顧客にも理解されている
2013年、スタートアップであれば「SaaSを利用する」ということに慣れてきていましたが、スタートアップ以外の伝統的な企業はSaaSに慣れていませんでした。このためパリク氏は潜在的顧客に対して「Heapはインストールする必要がない」「CDなどを送ることもない」ということを説明するのにも苦労したそうです。

今日、このような懸念はほとんどなくなりました。セキュリティ関連の質問を受けたり、ベンダー評価に時間をとられることはありますが、SaaSがどのように機能しどのような潜在的リスクがあるかということは、よく理解されているように感じるとパリク氏は述べています。

◆6:「成功するためには大企業に製品を売る必要がある」わけではなくなった
Salesforce、ServiceNow、WorkdayといったSaaSは、主に大企業向けに製品を販売することで収益を得ています。これまでSaaSの成功までの道のりは、このように「中小企業向けの製品から初めて、大企業向けに展開する」という「アップマーケット」のアプローチが一般的でした。Heapも小規模なスタートアップ向け製品から始め、一般的な方法にのっとりアップマーケットのアプローチを試みたそうです。

ただしHeapの場合、結果は「まちまち」だとパリク氏。Heapは最終的に中小企業と大企業を顧客に持つようになりましたが、アップマーケットのアプローチによって、それまでに獲得した口コミや個人向けサービスの顧客を制限することにもなったとのこと。「思い返すと、全てのタイプの顧客に対応するために、価格設定と市場投入をセグメント化することについて、十分な仕事をやっていませんでした」とパリク氏は振り返ります。Slackのようなサービスがサイドプロジェクト向け・大企業向けのサービス展開で成功していることを受けて、「もし2021年にHeapをリリースするなら、より賢明な成長アプローチを取るでしょう」とパリク氏は述べています。

◆7:重要なことに集中することが簡単になった
国をまたいだ給与の支払いはかつて複雑なものでしたが、DeelのようなSaaSが現れることによって国内での給与支払いと同じように簡単になりました。このように、「製品を作る」こと以外に企業が行わなければいけない業務は、他のSaaSで賄うことができるようになっています。パリク氏は8年前、Heapを運営する上で何時間、あるいは何日も弁護士とのやり取りに費やしていましたが、他社のSaaSを利用すればその必要はありません。このため、お金や時間を節約しつつ「本当に重要なこと」に時間や労力を割けるようになったと言えます。

「全体として、2013年とは状況が大きく変わりました。しかし、同じこともあります。製品を市場に適合させることは簡単でも理解しやすいものでもありません。そしてそれこそが、初期段階において唯一の『重要なこと』です」とパリク氏は締めくくっています。

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Pinterestがアイデアピンからのアフィリエイトリンクを有効にすると発表

写真共有プラットフォームの「Pinterest」が新たに、クリエイターによるストーリー仕立ての投稿「Idea Pins(アイデアピン)」から、アフィリエイトを利用した製品ページへの誘導リンクを貼る方法を導入しました。これによりブランドや企業はクリエイターに効果的に商品を紹介してもらえ、クリエイターが生計を立てる手段も増えると考えられています。

Introducing new ways for Creators to earn money and partner with brands on Pinterest | Pinterest Newsroom
https://newsroom.pinterest.com/en/post/introducing-new-ways-for-creators-to-earn-money-and-partner-with-brands-on-pinterest

Pinterestは2021年5月にアイデアピンという機能をリリースし、日本でも6月から利用可能になっています。アイデアピンは複数の画像や動画をストーリーにして投稿する新しい形式のピンであり、Instagramのストーリーズのようなイメージですが、時間が経過してもピンが消えることはありません。実際にTastemade_Japanが投稿したアイデアピンは以下の通り。

そして7月27日付で新たにPinterestは、ユーザーがアイデアピンから買い物可能になる機能をリリースしました。これによりピンの投稿を行ったクリエイターがアフィリエイトリンクを通じてコミッション(製品を紹介することに対する報酬)を得ることが可能になります。

PinterestユーザーはPinterestを「買いたいものを見つけるためのカタログ」として利用することが多いため、Pinterestでは既にビジネスアカウントのユーザーが、ウェブサイトの製品とPinterestの投稿を紐付ける「プロダクトピン」が利用可能です。プロダクトピンによって企業やブランドはPinterestから自社サイトにユーザーを誘導できるようになっています。しかし調査によって、プロダクトピン単体として存在する商品よりも、アイデアピンからタグ付けされた商品の方が、ユーザーの購入意図が89%も高くなることが判明したとのこと。この調査結果を受けて、「アイデアピンから商品へのアフィリエイトリンクを付ける」という機能が生まれたわけです。

また、Pinterestではブランドとパートナーシップを締結するクリエイターが存在しますが、Pinterestはこのようなパートナーシップの開示を強調していきたいと考えており、有料パートナーシップを開示するツールのベータ版も同日から公開されています。ブランドコンテンツを作成するクリエイターはアイデアピンの作成時にブランドを追加し、ブランドがそれを承認すると、アイデアピンに「有料パートナーシップ」ラベルが表示されるとのこと。これによりブランドとクリエイターの関係構築が容易になると考えられています。

Pinterestが重視しているのは「エンターテイメント」よりも「インスピレーションを中心としたクリエイターのプラットフォームであること」であり、上記の機能はコンテンツをより実用的にし、クリエイターがブランドと提携して生計をたてることをこれまで以上に容易にすると考えられています。

なお、アイデアピン内における製品ページへのリンクは記事作成時点でアメリカとイギリスのビジネスアカウントで利用可能であり、今後数カ月でその他の国でも展開される予定。また有料パートナーシップツールはアメリカ・イギリス・カナダを始めとする16カ国でベータ版が利用可能ですが、日本ではまだ展開されていないとのことです。

なお、商品ページへの誘導リンクをプラットフォーム内に限らず、Googleなどの検索結果に残す方法としては、記事広告という方法も存在します。

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「TikTokで人気のコンテンツ」が広告として利用可能になるサービス「Spark Ads」をTikTokが開始

動画共有プラットフォームの「TikTok」が新たに、「プラットフォーム上で既に人気を集めているコンテンツ」をブランドが広告として利用できるサービス「Spark Ads」を提供することが判明しました。

Introducing Spark Ads: An authentic way for brands to elevate native, popular content | TikTok For Business Blog
https://www.tiktok.com/business/en/blog/spark-ads-authentic-way-brands-elevate-native-popular-content

TikTok Launches New ‘Spark’ Ads Which Enabled Brands to Tap into Trending Organic Content | Social Media Today
https://www.socialmediatoday.com/news/tiktok-launches-new-spark-ads-which-enabled-brands-to-tap-into-trending-o/603671/

TikTokにはさまざまな動画が存在し、以下のような「メイクアップ動画」もその1つ。
@monaswain

Love how these drops have been evening out my skin tone! @isleofparadise available now at Sephora #Ad #selfcare #selflove

♬ Paradise – Nate Kreiswirth

例えば化粧品ブランドがSpark Adsを使うと、インフルエンサーによって投稿されたこのようなオーガニックの投稿のうち、自社が実施するキャンペーンの内容と合致するものをインフィード広告TopViewといった有料キャンペーンのクリップとして再利用可能になります。もちろんインフルエンサーのコンテンツを勝手に利用するのではなく、ブランドがインフルエンサーに連絡を取ったのちに有料キャンペーンへ利用可能になるとのこと。

TikTokは発表の中で、「TikTokは、エンターテイメントを再定義し、トレンドを生み出し、人気のある製品やサービスについての見解を共有するクリエイターによって構成されています。ブランドはこのような多様なコンテンツと創造性の宝庫の世界に足を踏み入れ、製品やサービスを広めるクリエイターたちとつながることができます」と述べています。

Spark AdsはすでにTikTok上で人気を集めているコンテンツを広告として利用するため、リーチを最大化することが可能で、かつSNSに不慣れなマーケターでも効果的なキャンペーンを実施できるという点がメリットと考えられています。またコンテンツを広告として利用する際にブランドは広告ターゲティングツールを使用できるため、ターゲットを絞ることでさらに効果的に広告が実施できます。複数の投稿者のコンテンツを合わせて動画を作成するデュエット機能が利用できることも大きな利点です。

多くのブランドはまだYouTubeやFacebookと比較してTikTokを広告の出稿先としてあまり利用していませんが、TikTokがブランドの広告ツールの1つとなるのは時間の問題だといわれています。TikTokは広告出稿のキャッチコピーを「広告を出さないでください。トレンドを作りましょう」としており、「最も効果的なプロモーションは、ユーザーがフィードで目にしているもの」だという考えを持っています。このためブランドが従来型の広告を独自に作成するのではなく、TikTokのフィードを利用したSpark Adsのような形が最適だと考えられているわけです。

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衛星画像から車の傾向を把握して「最も価値の高い看板広告」を判断する「Cuende」がアメリカに進出

街頭や駅構内など野外に表示されるOOH(OUT OF HOME)広告は、これまで「効果測定が難しい」といわれてきました。そんな中、2021年7月19日(月)新たに、スペインを拠点とする「Cuende」は、衛星画像を利用して特定エリアの交通量を測定しOOH広告の価値を測定するプラットフォーム「MetricOOH」をアメリカで開始すると発表しました。

Cuende wants to standardize OOH traffic metrics using satellites
https://digiday.com/media/a-spanish-ad-company-wants-to-standardize-ooh-traffic-metrics-using-satellites/

MetricOOHは最大9000平方キロメートルの範囲について衛星画像を撮影し、データを機械学習アルゴリズムで処理することによって、広告の前を通過する車の台数を測定するというもの。最終的には通過する車両の傾向によって、どの場所にある広告の価値が最も高いかを判断します。CuendeはMetricOOHについて「洗練されつつも、使用方法が理解しやすい」ツールであると述べています。

Cuendeはすでにスペイン・南アフリカ・ルーマニア・メキシコといった国々でサービスを展開しており、今回新たにアメリカの看板広告ネットワークであるIBOと契約を結びました。IBOは主にアメリカの地方エリアでの看板広告9万件以上を扱っていますが、Cuendeは「ニューヨークやロサンゼルスの真ん中など、どこでも機能する、ベーシックかつシンプルで信頼できるものを作りたいと考えています。私たちは町、都市、特定地域、そして国中で使える標準を持っています」と述べました。

これまでIBOはあまり洗練された広告測定ツールを使用してきませんでした。一方で、クラウドベースのツールセット「IBO Coop Speedway」を有しており、5万社が登録を行っています。このためCuendeはIBO Coop Speedwayを介して広告会社に対し「価値の高い看板広告」の情報を提供することができ、広告会社はリモートで広告の発注が可能になります。

上記の点が大きなメリットだと判断され、今回の契約に至ったと、IBOのゼネラルマネージャーであるChris Cowlbeck氏は説明しました。またCowlbeck氏はCuendeに対し、安全性を検証するために、広告測定システムに認定を与える広告業界団体・Media Ratings Council(MRC)の認定を得るよう求めています。

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44億円の資金調達に成功したeコマース最適化ツール「Teikametrics」とは?

2020年から2021年にかけてデジタル化が大きく進み、オンラインショッピングの需要が増加しました。このような状況の中で、サードパーティーマーケットプレイスによるeコマースビジネスを最適化する「Teikametrics」が約44億円の資金調達に成功したと発表されました。

Taikametrics Raises $40M in Series B Funding | FinSMEs
https://www.finsmes.com/2021/07/taikametrics-raises-40m-in-series-b-funding.html

Teikametrics raises $40M to optimize ecommerce listings | VentureBeat
https://venturebeat.com/2021/07/15/teikametrics-raises-40m-to-optimize-ecommerce-listings/

2021年7月15日にeコマースビジネスを最適化するTeikametricsが、Intel Capital・GoDaddy・Centana Growth Partners・Jump Capital・Granite Point CapitalおよびSoftBank Vision Fund代表のLydia Jett氏らからシリーズBの資金調達において4000万ドル(約44億円)を得たと発表されました。

Teikametricsは、サードパーティーのマーケットプレイスで販売を行うブランドや小売業者の売上を最適化するツールを、SaaSとして提供しています。TeikametricsはAIを利用することで、製品の目標にあった広告キャンペーンを作成可能にし、理想的なディスプレイ広告の入札額を見定め、製品の売上を伸ばす検索キーワードの調整を行うとのこと。このとき、システムは自動でパフォーマンスを損なうキーワードを排除しつつ、コンバージョンを増やすキーワードを捕捉していき、目標までの進捗・収益性・必要な製品の組みあわせ・キャンペーンといった内容を追跡します。

具体的にTeikametricsが示すサービスの内容は以下の通り。

・広告最適化:
アルゴリズム入札とキーワード自動化による目標指向のキャンペーンで戦略的に需要を増加させる。
・マーケット・インテリジェンス:
AIを使った分析で売り上げと収益性を最適化し、ランキングを底上げしオーガニックの流入を増加させるとともに、さらなるビジネス最適化のためのデータを得る。
・優先的融資
ブランドの成長に必要な資金を得るための投資家へのアクセスを最適な利率とともに提供。
・在庫の最適化:
AIを使って取り残された在庫を追跡し、将来のニーズを予測、サプライチェーンのリードタイムを管理して、売上を最大化させるように効率化。これらを行いつつ、投資利益率(ROI)、在庫回転率、販売率といった指標を完全に可視化する。
・複数マーケットプレイスの最適化
1つのプラットフォーム上で、複数のマーケットプレイスにわたる在庫管理・広告作成を実施。それぞれのパフォーマンスをシームレスで確認可能にし、全体のパフォーマンスと戦略を最適化する。

これがTeikametricsのダッシュボード。

Teikametricsは、2001年にハーバード大学の寮内でeコマースビジネスを開始し、「Amazonのサードパーティーの売り手として最初に売り上げ100万ドルに達した人物の1人」であるというAlasdair McLean-Foreman氏によって2015年に創業されました。「Teikametricsのビジョンは、Amazonビジネスで成功した私の経験をもとに、データ・AI・専門知識を組み合わせることにあります」とMcLean-Foreman氏は述べています。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、世界的にデジタル化が進み、オンラインショッピングサイトの需要も急増しました。Amazonのマーケットプレイスは2021年第1四半期に60%の成長を記録しており、ウォルマートのマーケットプレイスも2022年までに146%の成長があるものと考えられています。eコマースのプラットフォームのユーザーが増加するにつれ、Teikametricsのようなサービスの需要も上がっていくものとみられます。

なお、eコマース製品の広告にはプログラマティック広告だけでなく、「理解を伴う認知」を得るための記事広告も有効です。

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営業チームなし・広告費ゼロでカルト的人気を得た「シラチャー」の戦略とは?

by Dave Winer

チリソースであるシラチャー・ソースは、アメリカでは熱狂的なファンを持ちます。アメリカ以外にも日本を含め世界中で販売されるシラチャー・ソースは年間売上が1億5000万ドル(約165億円)を超えていますが、実は営業チームを持たず、広告費ゼロで売り上げを伸ばしてきました。シラチャー・ソースがなぜ世界的なブランドになれたのか、作家のTrung TPhan氏がまとめています。

シラチャー・ソースの歴史には議論がありますが、1930年代にタイの「Si Racha(シラチャ)」という村でThanom Chakkapakという女性が唐辛子ペースト・醸造酢・にんにく・砂糖・塩からなるソースを製造したことが始まりだと言われています。その後、さまざまなバリエーションが作られつつシラチャー・ソースは広がっていきました。南ベトナムの元兵士であるDavid Tran氏が作ったソースも、そのバリエーションの1つです。

1978年、Tran氏の家族は「繁栄する仲間たち」を意味する難民船「Huey Fong」に乗り込み、アメリカに到着。Tran氏の家族は最終的にロサンゼルスに移り住みました。当時、カリフォルニア州にシラチャー・ソースに当たるものは存在しなかったため、Tran氏はレシピの材料を唐辛子から地元で採れるハラペーニョに変更してシラチャー・ソースを売り出したとのこと。

こうして生まれたシラチャー・ソースは当初、リサイクルされた離乳食の瓶に詰められ、バンで販売されました。初月の売上げは2300ドル(約50万円)だったそうです。

製品を目立たせるため、Tran氏は販売するもの全てに「おんどり」(=雄鶏)のイラストを印刷しました。なぜおんどりなのかという理由は、Tran氏がとり年であることに由来するとのこと。そして後に内容物を絞り出せる画期的な「スクイズボトル」をデザインし、新鮮さをイメージさせる緑色のキャップをつけました。

1980年代、アメリカではアジア料理のレストランや食料品店が増加していき、これに伴いシラチャー・ソースの人気も高まっていきました。需要に追いつくためTran氏は1980年にロサンゼルスのチャイナタウンに約460平方メートルの工場を作り、1987年に約6300平方メートルの倉庫を、2010年には約6万平方メートルの倉庫をカリフォルニア州に作りました。

シラチャー・ソース は材料が少ないため、Tran氏は市場で勝つために「最良のもの」を求めました。特にハラペーニョの収穫タイミングは難しく、ミスが許されません。Huy Fongは1年で供給する シラチャー・ソース の材料となるハラペーニョをわずか10週間のうちに収穫するとのこと。

またHuy Fongはハラペーニョの品質を保つために、28年間、1社だけから仕入れを行っていました。しかし2017年に仕入れ先の企業がつぶれてしまったため、その後、Huy Fongは3社から仕入れを行っています。工場では1日16時間、仕入れたハラペーニョの加工を行い、年間約4500キログラムを処理するとのこと。

年々売り上げを伸ばし、2019年にはアメリカのホットソース市場の10%にあたる年間165億円を売り上げた シラチャー・ソース ですが、「営業チームが不在」「広告費をかけない」という驚くべき戦略を取っています。この点、Tran氏はシラチャー・ソース に商標をつけなかったことで有名です。商標登録が行われていないため、ハインツからタバスコまで、多くの競合ブランドが「シラチャー」という言葉を使うことができます。Tran氏は多くの商品が「シラチャー味」を作ることが、 シラチャー・ソース にとっての「無料の広告」となると考えています。

「私は製品を作ることに忙しくて、他のブランドについて心配したことがありません。需要を満たすだけの製品を作れたことがないんです。消費者のためには、他のブランドにも協力してもらいましょう」とTran氏は述べています。

また シラチャー・ソースのボトルは5言語に対応しているのもポイント。

タイには「Sriraja Panich」というライバル商品がありますが、ハラペーニョの代わりにカイエンペッパーを使ったこの製品は、Huy Fongのシラチャ-がカルト的人気を博していることもあって、アメリカ進出に手こずっているそうです。

Huy Fongを買収しようとする企業ももちろん存在します。しかし、Tran氏は「裕福な人のソースを貧しい人の価格で」というモットーを持っており、買収には目を向けません。「私のアメリカンドリームは億万長者になることではありません。私はスパイシーで新鮮なソースが好きだから、このビジネスを始めたのです」とTran氏は述べています。

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Googleがeコマースをさらに強化しSquareやWooCommerceとも提携

GoogleがWooCommerceGoDaddySquareといったサービスとの提携し、eコマース機能を強化することを発表しました。Googleはオンラインショッピングの機能を次々に追加・拡張しており、Google検索やYouTubeといったショッピング以外の体験と、ショッピング体験をシームレスにつなげる試みを展開しています。

Get discovered and build your brand on Google
https://blog.google/products/shopping/gml-2021-build-your-brand/

Google, Shopify (SHOP), Square (SQ) Look to Boost Online Shopping Against Amazon – Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2021-05-27/google-shopify-extend-ties-in-commerce-blitz-against-amazon

Google Search, Shopping adding ‘deals’ result page – 9to5Google
https://9to5google.com/2021/05/27/google-shopping-deals-page/

Googleは2021年に入ってeコマース強化ツールを次々に発表しており、オンラインショッピングプラットフォーム「Shopify」との提携を明かしています。この提携により、Shopifyでショッピングサイトを持つ人は、Google検索・YouTube・Google画像検索といったプラットフォームの至るところに製品を表示できるようになるとのこと。

Googleがeコマース強化ツールを次々に発表、ショッピングサイト運営者はGoogleのいたるところに製品を表示できるように | GIGAZINE.BIZ

そして5月27日付けで、GoogleはShopifyに加えてWooCommerce、GoDaddy、Squareといったサービスとの提携も発表。これらのサービスを利用するショッピングサイトは、Googleのプラットフォームとの統合が無料かつ容易に行えるようになります。

Googleによると、2020年から「割引コード」というキーワードの検索が50%増加したとのこと。消費者がGoogle検索で「お得な製品」を求める傾向が強くなっていることを受けて、新しい検索結果のページでは、ブランドが行っているセールやプロモーションがより探しやすくなります。例えば「ブラックフライデーセール」と検索すると、「店舗からのセール」というタブを備えたナレッジパネルが表示され、ユーザーがセール中の製品により容易にアクセス可能になります。

「Deals(セール)」という部分をタップすると……

セール商品だけが表示されます。

また、ユーザーアカウントと紐付けて、特定のユーザーだけにセールや特別価格を表示する「ロイヤリティプログラム」もスタートします。

そして過去1年で「店頭受け取り」「近隣で購入」を目的とする検索が増加し、「在庫あり」というキーワードの検索については世界的に前年比800%となりました。このような背景から、Googleでは、検索を行ったユーザーの近くで製品を購入できる店舗の広告が表示されるほか、ユーザーが購入したい製品について、eコマースサイトや近隣店舗を含む全ての購入オプションが1箇所にまとめて表示される機能も開発されました。この新機能はキーワード検索とショッピング機能でテスト中であり、2021年中にはGoogle画像検索やYouTubeでも同様の機能が展開される予定です。

加えて、広告代理店の5WPRが行った調査によると、2020年には消費者の71%が「自分の重視する価値観と一致する企業から商品を買いたいと考えている」ことが示されたとのこと。また、マーケティングツールを開発するPowerReviewsの調査では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック以降、10人中9人が「これまで以上に美容製品をオンラインで購入するようになった」と答えています。これらの調査結果から、ブランドやショップが「オンラインでのショッピング体験を充実させること」がこれまで以上に重要だとGoogleは考えており、ARを使って化粧品を試せるツールや洋服を試着できるツールなどが利用可能になる予定です。

なお、製品の露出を増やすことと共に重要になるのが、製品の「ストーリー」を示して顧客の共感を得ることや、ブランディングです。GIGAZINEではストーリーテリングに焦点を当てた記事広告を掲載しており、以下から資料を取り寄せることが可能です。

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なぜ画像共有サービスの「Pinterest」は驚異的に広告売上を伸ばしているのか?

InstagramやFacebookといったプラットフォームに広告を出すことが一般的になる中で、画像共有サービスの「Pinterest」は2018年から2021年で広告売上を2倍以上に伸ばしていると注目されています。なぜPinterestの広告配信が人気を集めているのか、その裏側にある「ニューラルネットワークを使って広告を配信する仕組み」をウォール・ストリート・ジャーナルが解説しています。

Pinterest’s Use of AI Drives Growth – WSJ
https://www.wsj.com/articles/pinterest-ai-growth-11621604558

Pinterestはさまざまなウェブページに存在する画像を一覧形式で表示し、ユーザーが気に入った画像を「ピン」してコレクションできるというサービスです。2010年にスタートしたPinterestは、LinkedIn・Twitter・Instagramなどのプラットフォームと肩を並べて成長しており、アメリカで行われた2021年の調査では成人の31%が「使ったことがある」と答えたアプリとなっています

2021年第1四半期におけるPinterestの月間アクティブユーザーは4億7800万人。これは前年比で30%の増加ですが、ユーザーの成長率としては鈍化していると指摘されています。一方で、Pinterestの広告売上は2018年から2倍以上に増加しており、増加率はYouTubeやFacebookよりも大きいと市場調査会社のeMarketerは伝えています。

Pinterestの広告収入を支えているのが、ユーザーデータを基に次々と「画像のアイデア」を出すニューラルネットワークです。

Pinterestではユーザーがフォローしている人やブランド、あるいは保存したピンをもとに、さまざまな画像が提案されます。例えばインテリアに興味を持っている人が家具や内装の画像を保存していくと、アプリはリフォームのツールやアイデアを画像として表示していきますが、この中には「広告」として出稿された画像も含まれます。画像提案のプロセスに人間は関与せず、全てニューラルネットワークと呼ばれる高度なAIによって素早く処理されていくとのこと。

ここでいうニューラルネットワークは、画像やテキストといった大量のデータを取り込むことで、特定の物事について学習するもの。たとえば、犬や猫の画像データを大量に取り込んだニューラルネットワークは、犬と猫を区別する目やひげの形について学習します。特にディープニューラルネットワーク(DNN)はより細かい区別が可能で、犬・猫の区別だけでなく猫の種類まで識別します。Pinterestはこのようなニューラルネットワークを画像の識別や、ユーザーと広告のマッチングに利用しているわけです。

Pinterestがユーザーに広告を配信する際、具体的には以下のようなプロセスで処理が行われています。

◆1:ユーザー検索の分析
家の所有者がPinterest上でバスルームのタイルについて検索を行ったとします。このユーザーは画像に含まれるさまざまなタイルを目にし、その中から磁器タイルが写った画像をコレクションに保存します。

Pinterestの画像分析には畳み込みニューラルネットワーク(CNN)が使われます。CNNはユーザーが検索・保存した画像の中から磁器タイルの色や素材のほか、「バスタブが隣接していること」を識別し、タイルが浴室の床のためのものであると理解します。

続いて、グラフニューラルネットワーク(GNN)がユーザーが保存した画像と、同様の画像を保存した他の人を関連付けます。GNNは「関係性」に焦点を当てるニューラルネットワークであり、「浴室の床に興味を持っている人はPinterestからよく洗面化粧台を購入する」といったユーザーの「行動」との関連付けも行っていきます。

加えて、GNNはユーザーがこれまでに保存した画像や、買い物目的で保存した画像、買い物履歴などを分析し、ユーザーの好みや求める価格帯などを導き出します。

◆2:広告の分析
CNNやGNNはブランドがPinterestに出稿する広告の分析も行います。上記と同様にCNNやGNNは広告画像に含まれるものを価格やスタイルといった要素と合わせて分類します。

◆3:マッチング
「1」で行ったユーザーの興味・関心分析の結果と、「2」で行った広告の分析結果を、3つめのニューラルネットワークに出力。この3つめのニューラルネットワークがユーザーと広告のマッチングを行います。これにより、浴室のタイルの画像を保存したユーザーは、自分の好みにあった洗面化粧台の広告画像を表示されることになります。

Pinterestのニューラルネットワークのポイントは、通常であればユーザーが行わない関連付けを行うことにあります。上記の例でいうと、タイルを探しているユーザーの多くは洗面化粧台について考えませんが、自分の好みにぴったり合った広告が示されると、洗面化粧台を購入することに意識を向けます。このためPinterestは、広告が通常のピンと同じ形式で表示されることこそがユーザーエクスペリエンスを向上させると主張しています。

広告配信にニューラルネットワークを利用するプラットフォームはPinterestだけでなく、Microsoftが所有するビジネス特化型SNSのLinkedInも同様です。一方で、ニューラルネットワークには膨大なユーザーデータが利用されており、これが専門家の懸念材料となっています。この点について、Pinterestはセキュリティ上の理由で詳細については明かしていないものの、「データを保護するための措置を講じている」と説明しています。

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大手じゃなくても製品を市場に広めて地位を確立するにはどうすればいいのか?

「作った製品を多くの人に使って欲しい」という気持ちは当然のものですが、一般的に、市場で既に成功者がいて地位を確立している場合、新規参入は難しいとされています。しかし、デザインツールの市場に注目すると、画像編集ツールを提供するAdobeは長年「大手」として君臨しているものの、ここ数年はFigmaSketchCanvaといったスタートアップも成長しています。

なぜ本来難しいはずの新規参入に、これらスタートアップが成功したのかを、ベンチャーキャピタル・Greylock Partnersの元従業員であるKevin Kwok氏は「アトミック・コンセプト(原始的なコンセプト)」という言葉で説明しています。

How to Eat an Elephant, One Atomic Concept at a Time – kwokchain
https://kwokchain.com/2021/02/05/atomic-concepts/

アトミック・コンセプトとは、「製品がどのように構築され、他企業の製品ラインナップとどのように違うのか」を説明する根本的な概念をいいます。Figma・Sketch・Canvaの3製品は、アトミック・コンセプトをAdobeと分かつことで、すでに確立していたAdobe製品が持つ利点とユーザーベースを、「弱点」に変えることに成功したとKwok氏は述べています。

そもそも、市場は顧客のニーズによって支えられているため、顧客ニーズが急速に変化する市場において、会社が大手であることのメリットは小さいとのこと。顧客のニーズが変わる原因はさまざまですが、新しいユースケースの登場や市場ダイナミクスの変化も理由になります。

例えば、大手企業はコスト削減の観点から小さなユースケースに対応することを怠りがちですが、この「小さなユースケース」が後に大きなユースケースになることがあります。大手が小さなユースケースを軽視し、そこに着目したスタートアップが後に大きな成長を遂げることは少なくありません。また、市場ダイナミクスの変化に取り残された企業としてKwok氏はEbayを挙げています。オンラインで販売される商品の数が比較的少なかったインターネット初期はEbayの分散型オークションモデルが大きな価値を持ちましたが、eコマースが成長すると「価格」と「速度」がより重要になりました。このためAmazonのようなビジネスモデルが成長し、Ebayが不利になったとのこと。

加えて、インターネットにより人の行動が変化し、新しいタイプの顧客が出てくることもあります。このような新しいタイプの顧客は、大手の既存商品にはない、異なるニーズを持つことになります。

以下のグラフは縦軸がユースケース、横軸が時間の変化を示します。時間が進むにつれユースケースは増加していますが、ある時点でこれまでのユースケース(青いグラフ)以上に、新しいユースケース(緑のグラフ)が急増しており、ここにスタートアップが参入する余地があるというわけです。

デザインツール市場で新しいユースケースや新しい顧客が登場し、市場ダイナミクスの変化が起こる中で、大手だったAdobeと根本的に異なる「アトミック・コンセプト」を持っていたのが、Figma・Sketch・Canvaです。

Kwok氏はそれぞれの企業のアトミック・コンセプトを以下のように位置づけています。縦軸は画像処理・画像とデザインを含む処理・プロジェクト・コラボレーションといったワークフローについて、横軸はピクセル・ベクター・コンポーネント・テンプレートといった素材の違いについて示しています。Adobeの製品が基本的に個人レベルの画像処理に焦点を当てていたのに対し、FigmaやSketchはデザインが企業内で行われることを前提にプロジェクトやコラボレーションに着目しました。またCanvaの特徴はコンポーネントやテンプレートに力を入れている点にあります。

Photoshopはピクセル、Illustratorはベクターという違いがあるものの、基本的にいずれも「幅広いユースケース」を想定し、「画像や写真の編集」「デザインの編集」を目的としています。

一方、2010年に設立されたSketchはデジタル製品のUIやUXを設計することを前提に構築されました。このため、Sketchはデザイナーツールとして市場を独占していたAdobeのIllustratorから「デジタル製品の作成に最適ではないもの」を全て削除し、デジタルデザインの最適化に焦点を当てています。またベクターベースにすることでPhotoshopとの違いを生み出し、個人レベルではく大規模で複雑なプロジェクトで使われることを想定に構築することで、独自のアトミック・コンセプトを確立させました。

顧客のワークフローについて理解し、「顧客が本質的に求めていること」に対応させることにより、最高の製品は生まれるとKwok氏は述べています。

FigmaはもともとPhotoshopのライバルとしての位置付けでしたが、潜在的ユーザーと対話を持つにつれ、製品の焦点をUIやUXに移したとのこと。そしてUIやUXのデザイナーにとって重要なのは「コラボレーションを行うこと」だと気づいたFigmaは、WebGLといった新技術を利用して製品を独自の方法で進化させていきました。コラボレーションの力を最大化させることでFigmaは会社のあり方を根本的に再考し、新しい価格・流通モデルを設定することになったとのこと。

そして、これまでにはなかった、全く新しいユースケースと顧客に賭けたのがCanva。SketchやFigmaはデザイナーによる利用を想定していますが、Canvaは「非デザイナーによる利用」を想定しています。Canvaの着目したユースケースや顧客は、Facebook・Instagram・YouTubeが企業のマーケティングで利用されるようになったことに起因します。これらのプラットフォームで行われる広告はターゲットを絞っているため、1つのキャンペーンでもパーソナライズされた複数のバージョンが必要になります。テレビや雑誌におけるキャンペーンでは1つの大きな広告が使われるためデザイナーによる制作が必要ですが、SNSでのキャンペーンは「小さく」「速度重視で」実施するため、非デザイナーであるマーケティング担当が使えるデザインツールが必要になりました。

もちろん、Canvaで行える事はPhotoshopでも全て実行できますが、非デザイナーのマーケティング担当者はピクセルレベルの画像処理を必要としていません。Canvaには「特定の目的」のために構築されたテンプレートとレイアウトがあり、ユーザーがそれらを使いたい画像や文字と組み合わせることで創造性を発揮できるという点がポイントです。

また、Instagramの投稿、結婚式の招待状など「目的のために構築されたテンプレート」を中心にするCanvaで「ユーザーが求めるデザインやツール」は、「非ユーザーがGoogleで検索する言葉」でもありました。このためCanvaはSEOを通してプラットフォームを拡大することが可能でした。Canvaがユースケースを元にツールを構築し、多くのテンプレートやサンプルを用意することで、Googleで検索する潜在的なユーザーを効率的に取り込むことができたわけです。

加えて、Canvaはテンプレート・レイアウト・フォントなどを作成して販売したり、コミュニティを作成したりといったことが可能だったため、プラットフォームとして機能したことも、成功のためのポイント。このエコシステムにより、Canva自身だけの力でなく、エコシステムの力でユースケースを増やしていくことが可能でした。

もちろん、有料あるいは無料のアドオンを作成することは、Canva以外のデザインツールでもよくあることです。ただし、Canvaはアドオンの統合が極めてシームレスで、直接製品に組み込まれている点で優れています。摩擦がないためユーザーが自然にアドオンにアクセスでき、使用率が増加。またマーケットプレイスをファーストパーティとして扱うことで、クリエイターはCanvaを通じて収益を上げることが可能になり、プラットフォームのネットワーク効果が強化されました。

デザインの分野でだけ上記のような状況が起こっているわけではありません。デジタルコンテンツに関わる多くの分野で、新しいユースケースがどんどんと増え、同様の状況が生じています。しかし、初期の成功をおさめた企業でさえ、自分自身のアトミック・コンセプトを明確に定義し、それに応じて市場での位置付けを行っているところは少ないとのこと。これらの企業は競合や顧客、そしてどのようなユースケースが製品構築にとって重要なのかを明確にしていません。そして、このような問いに答えるには、「顧客が本当に欲しいもの」についてきちんと考えることが必要だとKwok氏は述べています。

なお、ウェブサービスやソフトウェアといったツールを広めて市場を開拓してくには、ストーリーテリングを得意とし使い勝手の良さを詳細に解説できる以下の記事広告もオススメです。

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