テレビ広告がネット広告のように視聴者の好みやライフスタイルを追跡可能になる

インターネットの世界ではユーザーの好みやライフスタイルに合わせてパーソナライズされた広告が一般的ですが、テレビ業界では長らく広告が性別や年齢にだけに基づいて売買され、個人に最適化されていませんでした。しかし、アメリカでは大手テレビ会社や動画配信サービスがテレビ広告で視聴者を追跡可能になるサービスへの取り組みを次々に発表しており、テレビ広告がパーソナライズされる日が来るとみられています。

Coming to a TV near you: personalized ads – Axios
https://www.axios.com/coming-to-a-tv-near-you-customized-ads-1548378037-e5553f3a-1ded-4cfd-9f5e-be89cd59cf69.html

インターネットではユーザーの好みやライフスタイルといったデータをもとにターゲットを絞って広告を表示することが可能ですが、従来のテレビ広告ではこのような表示方法は取られてきませんでした。

しかし、アメリカではテレビ局のNBCが追跡可能なテレビ広告をサポートするストリーミングサービスを開始すると発表したり、バイアコムCBSがデジタル広告をサポートしたTVストリーミング会社を買収したりと、追跡可能なテレビ広告を実現するための動きが起こっています。

近年はテレビから、Netflixのような広告のない動画配信サービスに視聴者が移行していますが、追跡可能なテレビ広告を実現することは「より優れたテレビ体験」の提供につながるとみられています。またインターネットは広告企業であるGoogleやFacebookにコントロールされているため、まだこれらの支配下にない新しいデジタル広告市場を開拓できるという意味でも、注目が集まっているとのこと。

追跡可能なテレビ広告が実現すれば、テレビにおいても広告のターゲットを絞ることが可能になるため、広告の費用を安くできるのが1つの利点です。これにより、これまでは大企業しか利用できなかったテレビ広告が、中小企業によって利用される流れに変わることが予測されます。視聴者の目線からいうと、視聴者はこれまでソーシャルメディアでしか目にしなかった広告をテレビで見るようになるはずです。

一方で、パーソナライズされた広告は大規模に配信することが難しいという課題もあります。このため、従来のテレビ広告を出していた「パーソナライズされていないが、お金をかけて多くの人にリーチしたい」という広告主とはすぐにはマッチしない可能性があります。またトイレットペーパーや歯磨き粉のように、細かなターゲティングが不要の商品に関しては、パーソナライズされた広告よりも従来型のより広範な広告の方がコストが下がる可能性もあると指摘されています。

これらの問題点を抱えているため、追跡可能なテレビ広告が技術的に可能になっても、すぐには広告の販売がうまくいかない可能性があるとのこと。しかし、テレビ業界は広告のあり方を刷新してNetflixのようなサービスに視聴者が流れることを防ぐ必要があるため、長期的な展望のためにはパーソナライズされたテレビ広告の展開が必須だとみられています。