FacebookやInstagramなどにアカウントを作成し、製品をアピールしたり広告を出稿したりする企業は多く存在しますが、ある日突然アカウントが停止され収益源が絶たれてしまうという事態も報告されています。SaaS「Jitbit」を運営するAlex Yumashev氏は、Jitbitには何の問題もないにも関わらずアカウントが停止され、しかもFacebook側に連絡する手段も絶たれてしまったという事態を経験したとして、ブログにつづっています。
Facebook Banned our SaaS Website
https://www.jitbit.com/alexblog/295-facebook-banned-our-saas-website/

Jitbitは多くのウェブサービスと同様にTwitterやFacebookのアカウントを持っており、日々、ユーザーに役立つ情報の配信を行っています。しかし、Yumashev氏によると、2020年4月にJitbitのFacebookアカウントが何の前触れもなくBANされてしまったとのこと。アカウントが停止されてしまったため、これまでユーザーに多く「いいね」されていた投稿が見られず、Jitbitへの誘導として機能していたリンクも全て消えてしまいました。Facebookはコンテンツを監視・削除する自動化されたモデレーション・アルゴリズムを持っており、Jitbitの何の問題もない投稿が、誤ってアルゴリズムに「コミュニティ標準に違反している」と判断されたことがアカウント停止の原因でした。
アカウントが停止されたことについてFacebookから連絡はなく、Bufferのダッシュボードで初めて事実に気づいたとYumashev氏は述べています。そして、最悪なのはアカウントが停止されてしまったためにFacebookに連絡する手段すらなくなってしまったということ。シェアデバッガーを使ってステータスの確認が可能で、「異議申し立て」のリンクがあったためYumashev氏は使ってみたそうですが、8カ月たってもFacebookからの応答はありませんでした。
「Facebookはカスタマーサービスが不十分だ」ということは何年も指摘し続けられている点ですが、Facebook側に改善の動きはありません。このため「Facebookのサポート担当者に連絡する」というサービスを販売している会社すらあるとのこと。
しかし、このようなサービスの利用料が高額で、500ドル(約5万2000円)からだとYumashev氏は述べています。サポートサービスを運営する会社の多くはソーシャルメディアマーケティングの代行を担っており、クライアントの多くは多額の広告費を支払える大手企業。マーケティング会社はFacebookの人間とやりとりすることができるため、このようなサービスが可能になるわけです。

Yumashev氏は上記のようなサービスを利用する替わりに、Facebookに対する上訴を提出するための会社を利用しました。その結果、Facebookのアカウント停止はすぐに解かれたとのこと。このプロセスの中で、アカウント停止の原因は外部のボットネットがJitbitをBANさせるよう偽の通報を行っていたことだと判明したとのこと。
幸いなことにFacebookを経由してJitbitに訪れるユーザーは全体の一部だったため大きな被害はありませんでした。しかし、Jitbitのアカウント停止はJitbit側に問題があったわけでも、またFacebookのアルゴリズム変更などによるものでもなく、「外部からの攻撃」が原因であり、前触れはありませんでした。1つのプラットフォームに収益源を依存している場合、ある日突然このような事態が起こってビジネスが大混乱に陥る可能性があるとYumashev氏は指摘しています。YouTubeやInstagramでは、偽の著作権侵害の申立を代行するビジネスも横行しており、これによってアカウントのコンテンツが削除され盗まれてしまうという事態も発生しています。
1つのプラットフォームへの依存がビジネスに大きな影響を与える他の例としては、Appleが人気ゲームの「フォートナイト」をApp Storeから削除したことが挙げられます。開発元のEpic Gamesは記事作成時点でApple相手に訴訟中です。
App Storeにフォートナイトを戻すために「Appleの報復行為を止めて」とEpic Gamesが裁判所に要請 – GIGAZINE
FacebookやYouTube、Appleなどは多くの中小企業が広告の出稿先や顧客獲得ツールとして利用していますが、これら大企業はそれぞれの中小企業に対して気を払わないため、「1つのプラットフォームに依存することはポーカーにオールインするようなもの」と言われるところ。プラットフォームでけん引力を獲得することは戦略として正しいものの、長期的には別の方法でビジネスを構築する必要があると指摘されています。