オーストラリアで歯磨き粉メーカーのマーケティング担当として働いていたディートリヒ・マテシッツ氏は、1984年にスタートアップとしてレッドブルを創業し、2021年時点では世界的な大富豪として知られています。広告予算のないスタートアップが世界的な企業に成長するまでのカギは、企業の成長や収益性の向上ではなく、ブランドの「物語作り(ストーリーテリング)」にありました。
Lessons From Red Bull’s Marketing | by Kenji Farré | Better Marketing | Medium
https://medium.com/better-marketing/lessons-from-red-bulls-marketing-b8e44aeb2856
マテシッツ氏はタイのバンコクを訪れた際に時差ボケで苦しんでいたところ、現地のガイドに「Krating Daeng」という栄養ドリンクを勧められました。Krating Daengは「パフォーマンスをブーストし集中力を上げさせる」という触れ込みの飲み物。当時、東南アジアではこのような栄養ドリンクが一般的に飲まれていましたが、西欧諸国ではほとんどなかったことから、マテシッツ氏はその存在に目をつけました。
1984年に勤めていた企業を退職したマテシッツ氏は、Krating Daengの製造元と契約し、ヨーロッパ向けに同様のドリンクを売り出すことにしました。実際に販売が開始されるまでには3年という月日を要しましたが、そうして生み出された「レッドブル」は人気を急上昇させていき、2021年時点で年間売上高8000億円・従業員数1万2000人・171カ国に拠点を置く大企業に成長しました。

スタートアップだった当時のレッドブルには、テレビやラジオ、巨大な看板を出すような潤沢な予算などはなし。そこでレッドブルは「The Red Bull Flugtag」という、建物の3階相当の高さから水面に向けて人力飛行機を飛ばすオリジナルイベントを開催し、製品アピールの場所として利用しました。手作りの飛行機が水面に落下したり飛行したりする様子を見るために多くの人が集まり、イベント開催とともにレッドブルの知名度は上昇。2012年には22万人もの人が集まりました。
加えてレッドブルは創業の初期段階で、「ブランドが人気である」ということを演出するために、空になったレッドブルの缶を路上に放置するという試みも行っています。交通量の多い道で行ったこの試みは独創的であると共に悪評高いものでもあります。レッドブルは同様の試みを、よりターゲットを限定した大学のキャンパスやスタジアム、ナイトクラブでも実施しました。
上記のような大胆なマーケティング戦略を実施するとともに、レッドブルが重視したのは、「物語を作る」ということ。顧客から愛されるブランドは「いい製品を作ること」だけではなく、消費者の感情を呼び起こす物語を作ることにたけています。AppleがiPodをリリースする際にうたった「1000曲をポケットに」、NIKEの「Just do it(行動あるのみ)」などと同様に、レッドブルは「翼をさずける」というフレーズを中心とした物語を作成しました。
レッドブルは飛行機イベントやF1レースのスポンサーとなっていますが、これこそが「冒険・スリル・アドレナリン」の代名詞となるレッドブルの強力なイメージ、つまり物語を作る役目を担っています。もちろんレッドブルの最終目標は売上げを増やすことでしたが、ストーリーテリングにこだわることで、レッドブルは競合他社よりも優位に立ち、プレミアム料金でも支払うロイヤルカスタマーの獲得に成功しました。

レッドブルの事例は、大きな広告予算がなくとも人々の視線を集めることが可能であることを示しています。そのために重要なのが成長や収益性よりも、人々が参加したがる「ムーブメント」を作ること、そしてムーブメントを支える「物語作り」にあるわけです。
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