世界最大級のベンチャーデータベース「Crunchbase」の調査報告で、2021年第1四半期は、ベンチャー企業に対する投資額が史上最大になったことが判明しました。世界的なベンチャー投資額は1250億ドル(約13兆6000億円)に達しており、四半期で投資額が1000億ドル(約19兆円)に達したのはこれが初とのことです。
Global Venture Funding Hits All-Time Record High $125B In Q1 2021 – Crunchbase News
https://news.crunchbase.com/news/global-venture-hits-an-all-time-high-in-q1-2021-a-record-125-billion-funding/
2020年第1四半期から2021年第1四半期までの投資額の推移は以下の通り。グラフのうち青色がエンジェル投資家などによるエンジェルシードの投資で、緑が初期段階の投資、紫が後期段階の投資、赤が技術的成長に対する投資を示します。2020年は全体的に投資額が増加傾向にありますが、特に2021年第1四半期でグラフが大きく額が跳ね上がっているのが見てとれます。

2021年第1四半期の投資額は約13兆6000億円となっており、この次は920億ドル(約10兆円)を記録した2018年第4四半期にまでさかのぼります。
投資額が増加したのは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックでテクノロジーへの需要が増加し、テクノロジー系のスタートアップが成長したことが理由だとCrunchbaseは述べています。このため、投資額が増えただけでなく、ベンチャー企業の買収やIPOも増加傾向にあるとのこと。
ただし、ベンチャー立ち上げの準備期間であるシード段階での資金調達数は2020年から2021年にかけて減少傾向にあります。これは投資家が新しい投資機会を探すのではなく、すでにある程度の成果を出している企業を支援することに焦点を置いたため。
以下は線グラフがシード段階の資金調達数、棒グラフがシード段階の資金調達額を示します。調達額に大きな変動はありませんが、調達数は減少をたどっていることがわかります。

また初期段階の調達数(線グラフ)と調達額(棒グラフ)を見てみると、過去1年の調達数は微妙に減少傾向にありますが、2021年第1四半期の調達額は急増。初期段階での投資が盛り上がっていることがわかります。

そして、後期段階の調達数(線グラフ)と調達額(棒グラフ)はいずれも大きく増加。 2021年第1四半期の調達額は前年同期比で122%でした。この成長率の高さは1億ドル(約109億円)規模の投資の多さによるもの。全体のうち79%が1億ドル以上の投資によるもので、この割合は2020年第4四半期の74%、2020年第1四半期の63%と比較しても高いものとなっています。

なお、後期段階で投資の対象となることが多かったのはヘルスケア・金融サービス・運輸・商取引・ショッピング分野の企業で、前年比で増加がみられたのは管理サービス・貸与・セールス&マーケティングの分野とのこと。
投資に加え、ベンチャー企業の買収も増加傾向にあります。以下のグラフは線グラフが買収の数、棒グラフが買収額合計で、2021年第1四半期は前四半期に比べて額の増加はありませんが、数は前四半期から26%増、前年同期から44%増となっています。10億ドル(約1090億円)規模の買収は15件あり、2020年第4四半期には20件だったので、規模の大きな買収が減ったことが、最終的な合計額が大きく伸びなかった理由のようです。

また2021年第1四半期は80のベンチャー企業が新規株式公開を完了しました。最も評価額が高かったのはショートムービーアプリを開発する中国の「Kuaishou Technology」で、1500億ドル(約16兆円)。続く韓国のeコマース企業「Coupang」は600億ドル(約6兆5300億円)、中国の電子タバコブランド「RELXテクノロジー」は458億ドル(約4兆9900億円)となっています。