なぜ画像共有サービスの「Pinterest」は驚異的に広告売上を伸ばしているのか?

InstagramやFacebookといったプラットフォームに広告を出すことが一般的になる中で、画像共有サービスの「Pinterest」は2018年から2021年で広告売上を2倍以上に伸ばしていると注目されています。なぜPinterestの広告配信が人気を集めているのか、その裏側にある「ニューラルネットワークを使って広告を配信する仕組み」をウォール・ストリート・ジャーナルが解説しています。

Pinterest’s Use of AI Drives Growth – WSJ
https://www.wsj.com/articles/pinterest-ai-growth-11621604558

Pinterestはさまざまなウェブページに存在する画像を一覧形式で表示し、ユーザーが気に入った画像を「ピン」してコレクションできるというサービスです。2010年にスタートしたPinterestは、LinkedIn・Twitter・Instagramなどのプラットフォームと肩を並べて成長しており、アメリカで行われた2021年の調査では成人の31%が「使ったことがある」と答えたアプリとなっています

2021年第1四半期におけるPinterestの月間アクティブユーザーは4億7800万人。これは前年比で30%の増加ですが、ユーザーの成長率としては鈍化していると指摘されています。一方で、Pinterestの広告売上は2018年から2倍以上に増加しており、増加率はYouTubeやFacebookよりも大きいと市場調査会社のeMarketerは伝えています。

Pinterestの広告収入を支えているのが、ユーザーデータを基に次々と「画像のアイデア」を出すニューラルネットワークです。

Pinterestではユーザーがフォローしている人やブランド、あるいは保存したピンをもとに、さまざまな画像が提案されます。例えばインテリアに興味を持っている人が家具や内装の画像を保存していくと、アプリはリフォームのツールやアイデアを画像として表示していきますが、この中には「広告」として出稿された画像も含まれます。画像提案のプロセスに人間は関与せず、全てニューラルネットワークと呼ばれる高度なAIによって素早く処理されていくとのこと。

ここでいうニューラルネットワークは、画像やテキストといった大量のデータを取り込むことで、特定の物事について学習するもの。たとえば、犬や猫の画像データを大量に取り込んだニューラルネットワークは、犬と猫を区別する目やひげの形について学習します。特にディープニューラルネットワーク(DNN)はより細かい区別が可能で、犬・猫の区別だけでなく猫の種類まで識別します。Pinterestはこのようなニューラルネットワークを画像の識別や、ユーザーと広告のマッチングに利用しているわけです。

Pinterestがユーザーに広告を配信する際、具体的には以下のようなプロセスで処理が行われています。

◆1:ユーザー検索の分析
家の所有者がPinterest上でバスルームのタイルについて検索を行ったとします。このユーザーは画像に含まれるさまざまなタイルを目にし、その中から磁器タイルが写った画像をコレクションに保存します。

Pinterestの画像分析には畳み込みニューラルネットワーク(CNN)が使われます。CNNはユーザーが検索・保存した画像の中から磁器タイルの色や素材のほか、「バスタブが隣接していること」を識別し、タイルが浴室の床のためのものであると理解します。

続いて、グラフニューラルネットワーク(GNN)がユーザーが保存した画像と、同様の画像を保存した他の人を関連付けます。GNNは「関係性」に焦点を当てるニューラルネットワークであり、「浴室の床に興味を持っている人はPinterestからよく洗面化粧台を購入する」といったユーザーの「行動」との関連付けも行っていきます。

加えて、GNNはユーザーがこれまでに保存した画像や、買い物目的で保存した画像、買い物履歴などを分析し、ユーザーの好みや求める価格帯などを導き出します。

◆2:広告の分析
CNNやGNNはブランドがPinterestに出稿する広告の分析も行います。上記と同様にCNNやGNNは広告画像に含まれるものを価格やスタイルといった要素と合わせて分類します。

◆3:マッチング
「1」で行ったユーザーの興味・関心分析の結果と、「2」で行った広告の分析結果を、3つめのニューラルネットワークに出力。この3つめのニューラルネットワークがユーザーと広告のマッチングを行います。これにより、浴室のタイルの画像を保存したユーザーは、自分の好みにあった洗面化粧台の広告画像を表示されることになります。

Pinterestのニューラルネットワークのポイントは、通常であればユーザーが行わない関連付けを行うことにあります。上記の例でいうと、タイルを探しているユーザーの多くは洗面化粧台について考えませんが、自分の好みにぴったり合った広告が示されると、洗面化粧台を購入することに意識を向けます。このためPinterestは、広告が通常のピンと同じ形式で表示されることこそがユーザーエクスペリエンスを向上させると主張しています。

広告配信にニューラルネットワークを利用するプラットフォームはPinterestだけでなく、Microsoftが所有するビジネス特化型SNSのLinkedInも同様です。一方で、ニューラルネットワークには膨大なユーザーデータが利用されており、これが専門家の懸念材料となっています。この点について、Pinterestはセキュリティ上の理由で詳細については明かしていないものの、「データを保護するための措置を講じている」と説明しています。

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