Unified ID 2.0が動作する仕組みを図解するとこうなる

行動ターゲティング広告はインターネット上のユーザーの行動をもとに、ユーザーの興味・関心が高そうな広告を表示することで、広告のパフォーマンスを上げる方法です。しかし、規制に伴い、これまで行動ターゲティング広告の中心だったサードパーティーCookieが利用できなくなってきており、広告企業は新たな広告の仕組みを開発しています。その1つである「Unified ID 2.0」がどのように機能するのかという仕組みを、開発元のTradeDeskが図解しています。

Breaking down the post-cookie solutions: Unified ID 2.0 | Advertising | Campaign Asia
https://www.campaignasia.com/article/breaking-down-the-post-cookie-solutions-unified-id-2-0/469506

Unified ID 2.0は、 サードパーティーCookieが使えなくなった後も行動ターゲティング広告を実現するための、新しい広告の仕組みを言います。

もともとUnified ID 1.0はアドテク企業のTradeDeskによって開発されましたが、その後、TradeDesk以外でもUnified IDを利用できるようにするためにオープンソース化された「Unified ID 2.0」が公開されました。

これまでのターゲティング広告がCookieの情報を識別子として広告表示していたのに対し、Unified ID 2.0はユーザーのメールアドレスを使って識別子を作成します。具体的な仕組みは以下の通り。

まず、Unified ID 2.0においてユーザーのメールアドレスはシングルサインオンで取得されます。シングルサインオンは1つのIDとパスワードを利用して、複数のウェブサービスやアプリケーションにログインする仕組み。ユーザーはUnified ID 2.0を利用しているウェブサイトを訪れた時に一度だけ「ターゲティング広告の表示」についての同意を求められます。この同意が、Unified ID 2.0を利用する他のウェブサイトが参加するネットワーク全体で適用されるというわけです。

ユーザーがターゲティング広告の表示に同意すると、暗号化・ハッシュ化された識別子が作成されます。

パブリッシャーはこのIDをウェブページに紐付けていき、「UID2 Token」と呼ばれる暗号化した値をデジタル広告の入札システムに送信。UID2 Tokenは認証済みのDSPにしか復号できないようになっており、認証済みDSPによって復号・広告入札が行われます。

Unified ID 2.0が機能するためには、DSPが復号を行うための復号キーを提供するプロバイダー、広告主にAPIキーを提供するなど、信頼情報についての責任を負う複数のプロバイダーが必要です。TradeDeskはUnified ID 2.0のプロジェクトをPrebidに渡しているため、複数のプロバイダーが関与するシステム全体のオペレーションはPrebidが行うことになります。

Unified ID 2.0はまだ開発中のプロジェクトであり、技術的にはあまり心配されていませんが、「広告キャンペーンの目標達成に十分なユーザーの同意を得ることができるかどうか」という部分に課題を抱えています。また、ヨーロッパではPII(個人を識別可能な情報)が厳格に規制されUnified ID 2.0の利用が限定されると考えられるほか、アジア太平洋地域ではメールアドレスよりも電話番号がサインイン方法として利用されているという点も課題とのこと。このためTradeDeskはアジア太平洋地域ではUnified ID 2.0の普及率がかなり低くなると予想しています。

また、Unified ID 2.0はユーザーの同意に基づく、プライバシーに配慮したターゲティング方法ですが、広告企業がユーザーの興味・関心情報を扱うFLoCといった技術とUnified ID 2.0を結び付ける方法を見つけ出せば、非倫理的なターゲティングが行われる可能性もあると指摘されています。

なお、Googleの開発するFLoCとUnified ID 2.0の違いや、Unified ID 2.0に賛同する企業の詳細などは以下から確認可能です。

Unified ID 2.0、Unified IDとは?CookieやGoogleの「プライバシーサンドボックス」との関係・違いを解説 | GIGAZINE.BIZ


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