近年は、有名人の名前を使って煽情的な見出しを書きページビュー数を稼いで広告収益を獲得する「クリックベイト」が問題視されています。クリックベイトのように本質的に無意味なコンテンツを公開して広告収入をかせぐウェブサイトは大量に存在しますが、Marketing Brewの新たな調査によって、「死亡記事のコピーを大量に公開して広告収入を稼ぐ」という手法が横行していることが明らかになりました。これらのウェブサイトはナイキを始めとするブランドの広告費を吸い取っていると指摘されています。
How spammy sites that rip off obits end up running ads from major brands
https://www.morningbrew.com/marketing/stories/2021/11/08/how-spammy-sites-that-rip-off-obituaries-suck-up-ad-dollars-from-major-brands
現代のインターネット広告のほとんどは、アルゴリズムが広告配信先のウェブページを決定するプログラマティック広告です。プログラマティック広告ではその仕組み上、広告主や代理店が配信先を直接指定することはありません。広告配信システムの中には広告ポリシーで低品質なウェブサイトを禁じるものや、広告枠の近くにあるコンテンツについて「NG事項」を設定可能なものも存在しますが、一体どこでどのように広告が表示されるのかを広告主が完全に把握するのは困難です。
このようなシステムの抜け穴を利用して、「死亡記事」のコピー記事を大量に公開することで広告収入をかせぐウェブサイトが横行しているとのこと。
例えば「deaddeath.com」は2021年8月に5475件の記事を公開しており、そのほとんどが死亡記事です。deaddeath.com以外にも「tragedyinfo.com」や「dailywebpoint.com」といったウェブサイトが死亡記事を大量に公開しています。これらの死亡記事はインターネットで公開されている記事をスクレイピングしたり、新聞の死亡記事をコピーしたりして作成されたものが大半だとみられています。
広告を収益源とするウェブサイトの多くは、トラフィックを増やしてより多くの広告を表示させるためにSEO(検索エンジン最適化)を実施しています。SEOは平たく言うと「人が検索するものを見つける」ことです。SEOの観点で言うと「人名」と「死亡」のセットは検索数が少なくとも必ず検索する人がいる手堅い組み合わせであり、死亡記事サイトは「大量に死亡記事を公開することで小さな広告収入を積み上げる」という方法を試みているとみられています。

これらのウェブサイトは低品質であるもののヘイトスピーチや極端な暴力などが含まれていないため、「ブランドセーフ」とみなされ、広告が表示されます。ただし低品質のウェブサイトやコンテンツの隣に広告が表示されるとブランドイメージを損なう可能性があり、多くのブランドは避けたがるもの。実際に一部のブランドは死亡記事の隣に自社の広告が掲載されることを防ぐため「死」や「死亡記事」といった単語を広告の「ブロックリスト」として使用するところもあります。また、広告調査会社のAdalyticsよると、インターネットの死亡記事のうち77%がオラクルのデジタル広告検証技術「OracleMOAT」によって「広告主にとって安全ではない」とみなされていたとのこと。
プログラマティック広告のコンサルタント会社・Jounce MediaのCEOであるChris Kane氏は「これらのウェブサイト運営者はアドテク企業のポリシーを熟読し、『Googleや他の取引所にギリギリ許容されるライン』を見つけ出します」とコメントしています。加えて、多くの広告主が避けたがるコンテンツであることは明白であるにもかかわらず、広告を表示し収益を上げている死亡記事サイトに対して「ナイキといったブランドから不当にマーケティング費用を吸い上げている」という指摘も。
Marketing Brewが死亡記事サイトに広告を掲載しているアドテク企業に連絡を取った結果、いくつかのアドテク企業は死亡記事サイトへの広告掲載を停止したそうです。また、Googleの広告担当者は「ウェブサイトのコンテンツよりも広告の方が多いページなど、不適切な広告フォーマットを使用するウェブサイトは、Googleの広告配信ポリシーによって明示的に禁じられています。また、他のページからコピーされたコンテンツと一緒に広告を掲載することも禁じられています。これらのポリシーに違反するサイトが見つかった場合、適切な強制措置を講じます」として、いくつかの死亡記事サイトについてレビューを実施中であると明かしました。

死亡記事サイト問題の根本には、広告主の意図しない場所に広告が無駄に表示されてしまうというプログラマティック広告のシステムそのものの問題があります。近年、プログラマティック広告はその有効性が疑問視されており、パフォーマンス改善のためには直接相性のいいメディアに広告を出稿することもも1つの方法です。
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